


水毒とは?漢方で改善する体内の水分バランス|主な症状と対策

「十分な水分補給をしているのに、なんとなく調子が悪い」「慢性的な冷え性やむくみに悩まされている」
こういった症状が見られる場合「水毒」という状態に陥っている可能性もあります。
聞き馴染みがなく初めて目にした方も多いと思いますが、水毒とは具体的にどのようなものなのでしょうか。
本記事では、水毒の主な症状や日常生活で実践できる予防策、さらには有効な漢方薬の一例もご紹介します。
目次
水毒とは?
水毒とは、東洋医学における概念の「気(き)・血(けつ)・水(すい)」のうち「水」が体内に溜まることでさまざまな不調をきたす状態を指します。
水とは血液以外の体液のことを指し、水が適切なバランスを保ち体内を巡ることによって私たちの健康は維持されています。
しかし、季節の変化や生活習慣などによって水のバランスが崩れると、リンパ液などの流れが悪くなり体内に滞留し、さまざまな不調に陥る原因にもなるのです。
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水毒の原因
水毒はどういったことが原因で現れるのでしょうか。典型的な3つの原因に分けて解説します。
水分の過剰摂取
水毒の原因として特に多いのが、水分の過剰摂取です。
体内の水分量を維持するためにはこまめな水分補給が必要ですが、体内で一度に吸収できる水分量には限界があります。
そのため、喉が乾いているからといって一度に大量の水分を摂取してしまうと、代謝しきれなかった水分が体内に溜まり水毒を引き起こすことがあるのです。
水分補給をする際には、コップ1杯程度の水をこまめに飲むことを心がけましょう。
内臓機能の低下
体内に補給した水分は、胃や腸などの消化器によって吸収されます。
しかし、生活習慣や病気、加齢などが原因で内臓機能が低下していると、水を飲んでも体内にうまく吸収されず停滞してしまいます。
冷たい食べ物や飲み物の摂りすぎ
冷たい食べ物や飲み物を摂取することが、水毒の間接的な要因となることもあります。
冷たいお茶やアイスクリームなどを口にした後、お腹を下した経験がある方も多いのではないでしょうか。
これは胃腸が冷えることで消化機能が低下し起こる症状であり、特に大量の冷たい食べ物や飲み物を口にすると水毒を引き起こす原因にもなります。
水毒が引き起こす症状
水毒の状態に陥ると、具体的にどのような不調が現れてくるのでしょうか。
個人の体質や水毒の程度によっても異なりますが、主な症状は以下の通りです。
- むくみ
- 体重増加
- 倦怠感
- 手足の冷え
- 頭痛
- めまい
- 胃もたれ・食欲不振
- 下痢
- 吐き気
- 関節の痛み など
むくみや手足の冷えなどは、水毒に多く見られる症状のひとつです。
やがて頭痛やめまいなども現れ、重症化すると膀胱炎などの疾患を引き起こす危険性もあります。
また、胃や腸などの消化機能が低下することで、胃もたれや吐き気、下痢などの症状が現れるケースも少なくありません。
「水」が溜まりやすいのは主に内臓や手足などが多いですが、稀に関節内にも滞ることがあり、この場合関節に痛みやこわばりなどの症状が現れることもあります。
さらに、あまりにも多量の水分を短時間に摂りすぎると、低ナトリウム血症とよばれる中毒症状を引き起こし、最悪の場合死に至る危険性もあるのです。
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水毒の治療には漢方がおすすめ
体にさまざまな不調が現れ水毒が疑われる場合には、漢方薬を服用することで症状を改善できる可能性もあります。
水毒に効果的な漢方薬にはどのようなものがあるのか、代表的なものを3つご紹介しましょう。
五苓散
五苓散(ゴレイサン)は、猪苓(チョレイ)、茯苓(ブクリョウ)、蒼朮(ソウジュツ)、沢瀉(タクシャ)、桂皮(ケイヒ)の生薬を配合した漢方薬です。
メーカーによっては蒼朮の代わりに白朮(ビャクジュツ)を配合しているものもあります。
このうち、猪苓と茯苓、沢瀉には利尿や発汗を促す作用があり、過剰に溜まった水を取り除くことで体内の水分バランスを調節します。
また、茯苓と蒼朮には弱った胃腸の働きを整える作用もあり、これらの働きによって水毒を改善する効果が期待できます。
防已黄耆湯
防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)は、防已(ボウイ)、黄耆(オウギ)、蒼朮(ソウジュツ)、生姜(ショウキョウ)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)
これらの生薬が配合された漢方薬です。
蒼朮の代わりに白朮(ビャクジュツ)が用いられることがあります。
主な生薬である防已(ボウイ)には、主に下半身に滞留した水を取り除く効果があるため、足の冷えやむくみに悩む方におすすめの漢方薬といえるでしょう。
猪苓湯
猪苓湯(チョレイトウ)は、猪苓(チョレイ)、茯苓(ブクリョウ)、沢瀉(タクシャ)、阿膠(アキョウ)、滑石(カッセキ)の生薬が配合された漢方薬です。
主薬である猪苓には尿量を増やす効果が期待できるため、尿量の減少や残尿感など排尿に関するトラブルが原因で水毒を引き起こしている場合におすすめの漢方薬です。
水毒を予防するために日頃からできること
水毒によって体の不調をきたさないようにするためには、日頃からどのような予防策を講じておけば良いのでしょうか。
日常生活の中で実践できる水毒予防の基本をご紹介します。
体を冷やさないようにする
胃腸をはじめとした内臓の働きが低下すると水分代謝が低下し、その結果として水毒を発症することがあります。
水毒の原因でもご紹介した通り、冷たい食べ物や飲み物を口にすると胃腸が冷え、水毒に陥る危険が高まります。
そのため、暑いからといって冷たいものを摂取しすぎることは避けましょう。
また、物理的に体を冷やさないことも重要なポイントです。
就寝時には体を冷やしすぎないよう布団や毛布を掛け、冬場の外出時には体を冷やさない服装を心がけましょう。
水分補給はこまめに
体内の水分バランスを維持するためには、水分補給が欠かせません。
しかし、一度に大量の水を飲んでしまうと体内に吸収しきれず、余った分が滞留する原因になります。
コップ1杯程度の水分をこまめに補給することで、効率的な水分代謝が促され水毒の予防につながります。
適度な運動をする
運動の習慣を身につけることで代謝がアップし、体の冷えも改善されていきます。
特に下半身は水が滞留し足先が冷えやすいことから、ウォーキングやランニングのほか、下半身の筋力トレーニングがおすすめです。
運動の習慣がない方の場合、はじめのうちは無理をせず、軽めのストレッチや運動からスタートし徐々に負荷を上げていきましょう。
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水毒に悩む方が漢方の使用で注意すべきこと
水毒に有効な漢方薬にはさまざまな種類があり、専門的な知識がない方にとってはどれを選べば良いか不安に感じることも多いでしょう。
上記でもご紹介した通り、水毒にはさまざまな原因が考えられます。
不調の原因を見極めたうえで、それにピンポイントに対応した漢方を選ぶことで初めて効果を実感できるケースが多いです。
一般的に漢方薬は西洋薬に比べて、副作用が少ないといわれることが多いです。
しかし、決してリスクがゼロというわけではなく、体質によってはさまざまな副作用をもたらすこともあります。
そのため、漢方薬を安全に服用し効果を実感できるようにするためには、自己判断で選ぶのではなく専門医や漢方に強い薬剤師に相談することがおすすめです。
宮城県仙台市にある漢方専門薬局「運龍堂」では、患者様一人ひとりの不調や体の悩みをヒアリングしたうえで、症状や体質に合った漢方を処方しています。
対面による相談はもちろん、LINEやZoomを利用したオンライン漢方相談も無料で行っているため、ご来店が難しい遠方の方でも気軽にご利用いただけます。
まとめ
「冷たい食べ物や飲み物を口にすることが多い方」「暑がりで薄着で過ごすことが多い方」
さらには「運動の習慣がない方」などは、日々の生活習慣が原因で水毒の状態に陥るリスクが高いといえます。
今回ご紹介したような自覚症状があり、体の不調に悩まされている方は水毒の可能性もあります。
まずは体を温め、こまめな水分補給と適度な運動を心がけるなど生活習慣を見直してみましょう。
また、これと合わせて「五苓散」や「防已黄耆湯」「猪苓湯」などの漢方薬を服用してみるのもおすすめです。
自分の体質や症状に合った最適な漢方薬を選ぶために、まずは一度運龍堂のオンライン漢方相談をご利用ください。
この記事の監修薬剤師
運龍堂 佐藤貴繁
略歴
1977年 北海道生まれ。北海道立札幌南高等学校
北海道大学薬学部を卒業
2003年 薬剤師免許を取得
2006年 北海道大学大学院薬学研究科生体分子薬学
専攻博士後期課程を終了後、博士(薬学)取得
2011年 福祉社会法人 緑仙会理事 就任
2012年 杜の都の漢方薬局 運龍堂 開局
2013年 宮城県自然薬研究会会長 就任
2017年 宮城県伝統生薬研究会会長 就任


