災害ストレスをケアする漢方薬

災害ストレスをケアする漢方薬

ストレスの原因となる刺激をストレッサーといい、過剰なストレッサーは健康を害するためきちんとケアする必要があります。

<ストレス症状が強く現れる原因と対策>
ストレッサーに適応するため必要なものは気血水の「気」=エネルギーです。ストレス症状が強く生じる時には「気」のトラブルである気虚(ききょ)、気滞(きたい)が生じています。「気」は生命活動のエネルギー源であり、量的に不足している状態を気虚、流れが停滞している状態を気滞といいます。身体に十分な「気」があれば日常のストレッサーには問題なく適応できます。適応能力以上のストレッサーが加わると一時的に不調になりますが、ストレッサーが解消されればすぐに健康を取り戻すことができます。気虚の状態ではわずかなストレッサーでも健康が損なわれるだけでなく、ストレッサーが取り除かれても回復が遅くなってしまいます。また、気滞の根底にも気虚が関与しています。

<気虚と気滞でみられる主な症状>
気虚の主な症状としては一言でいえば元気がない状態、身体のあらゆる働きが低下している状態です。疲れ、食欲不振、回復遅延などがあります。「気」の働きには「温煦(おんく)作用」という身体を温める働きもあるため、気の不足から陽虚となり、低体温や冷え性も起こってきます。気の生成よりも消費が上回れば気虚が生じますので、休養の不足や胃腸働きの低下、栄養バランスの悪い食事、老化なども大きな原因です。気滞の主な症状としては「張っている状態」です。具体的には胸や腹部の膨満感、張ったような腹痛、喉のつまり感や異物感、食欲不振などがあります。梅干しの種が喉の奥にへばりついているように感じる「梅核気(ばいかくき)」という症状が代表的です。気滞がひどくなると抑うつ、イライラ、寝つきの悪さ、頭痛、めまい、のぼせ感も起こってきます。これらの不調を感じたらそれぞれ気虚、気滞を疑い、早めにケアするようにしましょう。

<災害ストレス>
日本はこれまで東日本大震災を始め多くの災害に被災してきました。これらのような私たちの想像をはるかに超える危機的かつ衝撃的な経験は身体に様々な影響を与えることはいうまでもありません。強弱はあるものの災害ストレス反応も通常のストレスの場合と同様に、ストレッサーに適応しようとする自然反応ですが、精神状態として特有の経過をたどる傾向があります。その特有の経過とは「急性ストレス障害(ASD)」と心的外傷後ストレス障害(PTSD)」の二つです。「急性ストレス障害(ASD)」は被災後すぐに不眠、不安、緊張、錯乱、フラッシュバックなどの症状が現れ、数日から一か月で消失する特徴があります。「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」は「急性ストレス障害(ASD)」で見られる症状が一か月以上続きます。ストレスのケアには身体的ケアと精神的ケアが必要です。精神と肉体の状態は相互に影響しあっており、切り離して考えることはできません。漢方ではこのことを「心身一如(しんしんいちにょ)」といいます。

<気虚と気滞に用いる漢方薬>
気虚を改善することは活動に必要なエネルギー源を補ってることから肉体側のケアとも言えます。精をつける食べ物を食べたり、それを消化吸収できるように胃腸を整えたり、しっかりと呼吸をできるように肺の働きを整えたりすることがあげられます。気虚に用いる代表生薬が「朝鮮人参」です。漢方では単に「人参」といいます。人参は五臓すべてを補うとされ、「補気薬」の代表です。処方としてはたくさんありますが、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、六君子湯(りっくんしとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)、人参湯(にんじんとう)などが有名です。精神的なストレスがかかるだけでも気の巡りが悪くなり、気滞が生じます。このことから気滞を改善する漢方薬は精神側のケアを担う漢方薬とも言えます。四逆散(しぎゃくさん)、香蘇散(こうそさん)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)など、香りの強い生薬を含んだ処方が代表的です。実際に、香蘇散などの気滞を改善する処方ではマウスの実験において抗うつ作用が認められているなど科学的根拠(エビデンス)も報告されてきています。

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