東洋医学の考え方とは?気・血・水の概念と陰陽五行思想との関係性
東洋医学は2000年以上の歴史を誇る分野ですが、一般の方にとっては基本的な概念や考え方が難しく、理解しにくいと感じることもあります。
そこで、本記事では東洋医学の基本的な考え方である「気」「血」「水」や、「陰陽五行思想」の概念について分かりやすく解説するとともに、西洋医学との違いや具体的な治療法などもご紹介します。
目次
東洋医学の基本的な考え方
はじめに、できるだけ分かりやすい一般的な表現で東洋医学の基本的な考え方を解説しましょう。
気・血・水の概念
東洋医学では、ヒトの体と心の健康は「気」「血」「水」という三つの要素によって成り立っていると捉えます。
「気」とは一言でいえば体内のエネルギーを指し、体を巡りながら各機能を調整し、活力を生み出す存在です。
「血」は体のすみずみまで栄養を運び、各組織の働きを維持する役割を持つ体内の液体成分です。
「水」は血以外の体液で、体の潤いを保つほか、老廃物の排出にも関わります。
漢方において重要なのは上記3つのバランスであり、いずれかの要素が不足したり過剰になっていたりすると健康を害すると考えられているのです。
たとえば、「気」の不足は疲労感や倦怠感、無気力などに直結しやすく、「血」の不足は貧血や冷え性、「水」の滞りはむくみや関節痛を引き起こす傾向があります。
以上のことから、東洋医学では、気・血・水の調和を図る治療法や生活習慣の改善を行うことで、体全体の健康を維持することを目指しています。
陰陽五行思想とは
東洋医学において、気・血・水と並んで重要な概念とされているのが「陰陽五行思想」です。
陰陽五行思想とは東洋医学の基礎となる哲学で、その名の通り「陰陽論」と「五行説」という2つの要素が組み合わさったものです。
「陰陽論」とは、冷たさや静けさを意味する「陰」と、温かさや活動性を意味する「陽」のように、全ての現象を相反する性質で表すという考え方です。
たとえば、「陽」の季節である夏には体温を下げる陰の食材を、反対に「陰」の季節には体を温める陽の食材を用いることでバランスが整い、健康を維持すると考えられています。
一方、「五行説」は木・火・土・金・水という五つの要素が循環し、互いに影響し合うという考え方です。
これらはヒトの臓器(五臓)に当てはめることができます。
木:肝臓
火:心臓
土:脾臓
金:肺
水:腎臓
たとえば、肝(木)が弱ると、怒りやすくなったり目の疲れが出たりします。
陰陽と五行の調和を保つことは、自然と調和した健康的な生活への道筋とされ、さまざまな疾患の治療や予防の基本と考えられています。
関連記事:東洋医学と西洋医学の違いは?それぞれが活躍する場面とは
東洋医学と西洋医学の違い
東洋医学と西洋医学は、疾患の治療や予防に対するアプローチの仕方が大きく異なります。
東洋医学では、体全体のバランスを重視し、気・血・水や陰陽五行といった概念を用いて、心身全体の調和を目指します。
また、症状そのものだけでなく、その背景にある生活習慣や環境の影響に注目することも大きなポイントといえるでしょう。
一方、西洋医学は科学的根拠に基づき、病気や不調の原因を特定し、それをピンポイントで治療することを重視します。
診断技術や薬物療法、手術などが発展しており、特に急性疾患や外科的処置に優れています。
ただし、医療技術が発展した昨今でも発症原因やメカニズムが不明な疾患も多く、慢性疾患や全体的な体質改善については限界も指摘されます。
このように、東洋医学と西洋医学は根本的な考え方やアプローチが異なりますが、一概にどちらが優れている、あるいは劣っていると断定できるものではありません。
そのため、両者のアプローチの違いを正しく理解しつつ、相互補完的に活用することで、より幅広い疾患の治療や健康維持につながるといわれています。
東洋医学が活用される場面
東洋医学が有効的に活用される症状や疾患とはどういったものなのでしょうか。具体例を交えながらご紹介します。
風邪をひいたとき
東洋医学が活躍するもっとも身近な場面が、風邪のひきはじめです。
風邪の初期症状には、寒気や筋肉のこわばりなどが挙げられますが、このような陰の状態にあるときに陽の食材を用いることで、体が温まり自然治癒力を高める作用が期待されます。
また、体を温める生薬が配合された漢方薬を服用することで、寒気や筋肉のこわばりを和らげる効果も期待できます。
肩こりや腰痛
東洋医学では、肩こりや腰痛を「気血の滞り」と考え、さまざまな治療法を用いて血流を改善します。
また、姿勢の癖や生活習慣を見直すことで、慢性的な痛みの根本原因にアプローチします。
ストレスやイライラ
東洋医学においてストレスやイライラは「気」の巡りが悪化している状態とされます。
漢方薬によって心身の調和を整えたり、リラクゼーション効果のある呼吸法などを取り入れることで精神的な安定を取り戻します。
疲れがとれないとき
十分な睡眠をとっているのに疲労感が抜けない場合には、「気」および「血」の不足が原因と考えられます。
補気作用や補血作用のある生薬が配合された漢方薬を用いたり、食事で栄養バランスを整えることにより、気と血の巡りが改善し体のコンディションを整える効果が期待できます。
おなかの調子が悪いとき
腹痛や下痢などの症状は胃腸の機能が弱まっているサインといわれています。
そのため、消化しやすい食材を用いたり、体を温める働きのある陽の食材や生薬を用いることで症状を改善できる可能性があります。
季節の変わり目の不調
季節の変わり目は気温や湿度が大きく変化しやすく、これが原因で体内のバランスが乱れ不調につながるケースがあります。
気血水のバランスを保つためには、環境の変化に適応した生活習慣を心がけることはもちろんですが、不調が現れている器官や症状に合わせた漢方薬の服用も効果的です。
肌のトラブル
肌荒れや乾燥、吹き出物などの肌トラブルは、内臓の不調や水の停滞・不足が原因とされます。
特に水のバランスが崩れていると肌に十分な水分が行き渡らず、乾燥によって肌荒れがしやすくなります。
食生活の改善や十分な睡眠の確保といった生活習慣はもちろんですが、血流を改善するための施術や治療も求められます。
不眠に悩まされているとき
不眠症は身体的な不調だけでなく、精神的な不安や悩みなどが影響することも少なくありません。
寝具を替えたり早めにベッドに入っても不眠が続き、根本的な原因すらも分からず悩んでいる方も多いでしょう。
東洋医学では心身を落ち着かせるさまざまな治療法があり、明確な原因が分からない不眠の症状に対してもアプローチできます。
関連記事:不眠の主な原因とは?解決方法やおすすめの漢方をご紹介
東洋医学に基づく治療方法
東洋医学にはさまざまな治療方法が存在します。どういった疾患、症状に対してどの治療法が効果的なのかも踏まえ、具体的にご紹介しましょう。
鍼
鍼(はり)治療は、ツボや気が流れる経路に特殊な針を刺して刺激を与える伝統的な治療法です。
肩こりや腰痛、頭痛などの慢性的な痛みを緩和する効果が高いだけでなく、自律神経の調整にも優れています。
そのため、ストレスや不眠といった症状はもちろんのこと、月経痛や更年期障害といった女性特有の症状にも効果的とされています。
灸
灸(きゅう)は、ヨモギを原料に作られる「もぐさ」を燃やし、体を温める治療法です。
温熱効果によって血流が促進されるため、冷え性や胃腸の不調に効果が高く、慢性的な疲労改善にもつながります。
また、体の冷えからくる腰痛や生理痛、肩こりなどにも効果的です。
もぐさの燃焼が進むと熱くなってくるため、我慢しすぎてしまうとやけどを負うリスクもあります。そのため、最近では火を使わない温灸も人気です。
漢方薬
漢方薬とは、植物や鉱物などを原料とした自然由来の生薬がブレンドされたもので、個々の体質や症状に合わせて処方されます。
たとえば、風邪の初期症状には葛根湯、胃腸の弱りには六君子湯、冷え性やむくみには当帰芍薬散などの漢方薬が有名です。
現在ではドラッグストアなどでも市販薬として販売されており、処方箋がなくても手軽に購入できます。
按摩マッサージ・指圧
按摩マッサージや指圧とは、人の手や指で筋肉やツボを刺激し、血流を改善する治療法です。
肩こりや腰痛、筋肉のこわばり、スポーツ後の筋肉疲労などの症状に効果が期待できるほか、リラクゼーション効果にも優れているためストレス解消や精神的な安定にも寄与します。
気功・太極拳
気功や太極拳は、ゆったりとした動作と呼吸を組み合わせ、体内の気の流れを整える方法です。
セルフケアや健康維持を目的として行われることが多く、継続的に行うことでストレス解消や集中力の向上などが期待できます。
また、気功や太極拳は深い呼吸を意識しながら行うため、血や水の巡りを改善する効果もあり、冷え性や肩こり、腰痛の改善にも効果があるといわれています。
東洋医学を利用する際の注意点
東洋医学は体全体のバランスを整える優れた方法ですが、正しい知識のもとで利用しないと健康被害につながるおそれもあります。
どういった点に注意すべきなのか、5つのポイントに分けて解説します。
専門家への相談
東洋医学の治療は、一人ひとりの体質や症状に合わせて行う必要があります。
たとえば、ドラッグストアではさまざまな漢方薬が販売されていますが、自身の体質や症状によっては十分な効果が期待できなかったり、症状を悪化させる危険性もあります。
そのため、専門知識を持った医師や薬剤師へ相談することが大切です。
西洋薬と併用する際のリスク確認
東洋医学で用いられる漢方薬と、西洋医学の薬(西洋薬)を併用する場合、組み合わせによってはさまざまな相互作用が起こる可能性もあります。
薬に含まれる一部の成分が、効果を増強または抑制することがあるため、必ず医師や薬剤師に相談し、併用の可否や安全性を確認しておきましょう。
体質が変化する可能性
東洋医学の治療では、体質を改善し不調の根本的な原因を取り除くことを目指します。
しかし、その過程のなかで一時的に不調をもたらす場合もあります。たとえば、眠気や頭痛などの過剰な反応が出た場合は治療を中止し、医師や薬剤師に相談しましょう。
副作用が出る可能性
東洋医学に使用される薬は自然由来の生薬が原料となっているため、西洋薬に比べると副作用のリスクが低いといわれています。
しかし、副作用がまったくないわけではありません。体質に合わない漢方薬を服用したり、肌質によっては鍼灸の刺激が強すぎたりすることもあるため、何らかの不調を感じた場合には即座に使用を中止し医師や薬剤師に相談してください。
信頼できる情報源を利用する
東洋医学についての情報は多岐にわたり、なかには信頼性に疑問符がつく内容も少なくありません。
専門医の書籍や公的機関のウェブサイト、信頼できる医療機関などから情報を得ることで、誤った治療や商品の購入を防ぐことができます。
関連記事:水毒とは?漢方で改善する体内の水分バランス|主な症状と対策
オーダーメイド漢方の処方なら運龍堂まで
東洋医学の治療法のなかでも、特に漢方薬はハードルが低く手軽に購入できるメリットがあります。
しかし、上記でご紹介した通り個人の体質や症状によっても最適な漢方薬は異なり、商品選びを間違ってしまうと十分な効果が現れないこともあります。
宮城県仙台市にある漢方調剤薬局「運龍堂」では、患者様の体質や症状を丁寧にカウンセリングしたうえで、その人に合ったオーダーメイドの漢方薬を処方しています。
遠方で来店が難しい方や、仕事が忙しく十分な時間がとれない方のために無料のオンライン漢方相談も行っているため、東洋医学に少しでも興味があり体の不調を抱えている方はお気軽にご相談ください。
もちろん、オンラインでそのまま漢方薬をオーダーすることもできます。
まとめ
東洋医学には、気・血・水や陰陽五行思想といった基本的な考え方があり、これらは2000年を超える歴史のなかで培われてきた概念です。
特定の疾患や症状に対してピンポイントでアプローチする西洋医学に対し、東洋医学は体質を改善しトータルで健康を維持していくという違いもあります。
東洋医学の代表的な治療法である漢方薬は、副作用のリスクが少ないといわれていますが、その人の体質や症状を適切に見極めたうえで処方することが大切です。
安全性が高く高い効果が期待できる漢方薬を選びたい方は、オーダーメイド漢方の処方を行っている運龍堂へお気軽にご相談ください。
この記事の監修薬剤師
運龍堂 佐藤貴繁
略歴
1977年 北海道生まれ。北海道立札幌南高等学校
北海道大学薬学部を卒業
2003年 薬剤師免許を取得
2006年 北海道大学大学院薬学研究科生体分子薬学
専攻博士後期課程を終了後、博士(薬学)取得
2011年 福祉社会法人 緑仙会理事 就任
2012年 杜の都の漢方薬局 運龍堂 開局
2013年 宮城県自然薬研究会会長 就任
2017年 宮城県伝統生薬研究会会長 就任