2021/09/18

伝統生薬研究会の製品の使い分け

「伝統生薬研究会製品」は、牛黄や麝香を始め、非常に貴重な動物性生薬を
中心に配合した漢方薬で、インターネットなどによる通信販売はされておりません。
日ごろから東洋医学や生薬について知識を高めあう薬局・薬店で構成された会である、
「伝統生薬研究会」の会員のみが、取扱うことが出来ます。

伝統生薬研究会製品には、牛黄製剤である霊黄参、麝香製剤である
救心感応丸 氣、鹿茸製剤である霊鹿参など10種類の製品があります。
これらの製品を使い分けることで、様々な症状に対応することが可能です。

まずは、「体を温める」もしくは「体の熱を除く」視点から、
製品の分類を行います。

そのためには、「寒証」と「熱証」について知る必要があります。
わかりやすく言えば、「寒証」は寒さがある状態、「熱証」は熱がある状態です。
本来は、「寒証」にも「熱証」にも傾かない真ん中、漢方でいうところの
「中庸(ちゅうよう)」という状況が理想です。
ただし、どちらかの性質に傾くことが多いです。

また別の視点から原因によって、「虚証」と「実証」に分けられます。

自分が本来持っているものが不足している場合は「虚」、
原因を起こすものがある場合を「実」と言います。
良く、体が痩せている場合は、「虚」、
体がしっかりしている場合は、「実」だと言われますが、
それは、判断基準の一つに過ぎません。

例えば、自分の免疫力の低下が原因で病気になれば、「虚証」です。
一方で、外からウイルスが入って病気になれば、「実証」です。

「寒証」を例にすると、体を温めるものが不足して、冷えてしまえば、「虚寒証」
気温が低すぎて、体が冷えれば、「実寒証」となります。
ただし、「虚」と「実」は混ぜることが多いです。

体を温めるものが不足しているし、かつ外が寒いため
体が冷えてしまっているような状況です。
外の気温が同じぐらい寒いとしても、体が冷える人もいれば、
全然平気な人もいます。

当然、温める力が不足している人ほど、外の寒さの影響を
受けやすくなるので、「虚証」と「実証」は混ざりやすいのです。
最初の例で言えば、免疫力が低下している人(虚の状態)ほど、
それから入ってきたウイルス(実)の影響を受けやすいです。

また傾向として、「虚証」の場合、疲労時に悪化して、休むと軽減します。
朝は比較的、症状が軽いのに、夕方になって疲れてくると悪化するなどです。
一方、「実証」の場合、原因を取り除くことで、改善します。
寒さが原因であれば、部屋を温めることでも改善します。
ウイルスが原因であれば、ウイルスと接触しなければ当然病気になりません。
仕事のストレスが原因であれば、仕事の量を減らすことで改善します。

次に寒証の特徴ですが、
・寒冷の感覚がある(実寒証では感じにくいこともあります)。
・患部を温めると症状が軽減する。反対に冷やすと悪化する。
・鼻水や痰などの分泌物や、小便などの排泄物は
色が薄くなり、量が増える。
・消極的な態度になる
・痛みがある場合、引きつったような痛みや絞られるような痛みが出やすい。
これは、冷えや血量の低下によって、筋肉が柔らかさを失うためです。

対応の方法は、上記の通り、
「虚」の場合は、不足しているものを除き、
「実」の場合は、原因を除きます。

「虚寒証」では、自分で体を温める力が低下しています。
したがって、自分で温める力を補います。
漢方では、補陽薬というものを使い、これは甘い物が多いです。

「実寒証」では、外から寒さが侵入してきています。
したがって、熱を加えつつ、入ってくる寒さを分散して防ぎます。
漢方では、温裏散寒というものを使い、これは辛い物が多いです。
ここで言う「裏」とは体の深い部分を指し、「温裏」とは内臓などの
深い部分を温めることを言います。
なお皮膚など体の表面に近い部分は「表」と表現します。

すなわち
「虚寒証」→「甘味」で対応
「実寒証」→「辛味」で対応
となりますが、上記の通り、「虚」と「実」は混ざります。
従って、最初は「辛味」+「甘味」で対応して、「寒証」を
出来るだけ早く解消し、その後は「甘味」によって、
自分の体を温めることが出来るようにしていくことが多いです。

ここで、温性の伝統生薬研究会製品を比較してみます。
温性の薬として、霊鹿参(れいろくさん)、活命参(かつめいさん)、
亀鹿霊仙廣(きろくれいせんこう)、複方霊黄参丸(ふくほうれいおうさんがん)
などが有ります。

霊鹿参、活命参、亀鹿霊仙廣は、「甘味」がメインです。
一方、複方霊黄参丸は、「辛味」+「甘味」となっているので、
冷えを自覚している人は、複方霊黄参丸で冷えを除くことが多いです。

◎霊鹿参(れいろくさん)
・補陽薬:鹿茸(ろくじょう)→甘鹹、温、補腎
・補気薬:紅参(こうじん)→甘微苦、温
※鹹(かん)は、塩からい味を指します。
補陽薬と補気薬は、目に見えない無形のエネルギーを補うものです。
したがって、疲労、寒がり、息切れなどに使用します。

◎活命参(かつめいさん)
・補陽薬:鹿茸(ろくじょう)→甘鹹、温、補腎
・補陽薬:菟糸子(としし)→辛甘、温、補腎固摂(ほじんこせつ)
・補気薬:紅参(こうじん)→甘微苦、温
・補血薬:枸杞子(くこし)→甘、平
霊鹿参に、補陽薬と補血薬が加わっています。
補血薬は、ともに有形のものを補います。
つまり体の物質的な不足状態を解消するので、
例えば、乾燥、月経量の低下、精子の量の低下などに使用します。
加えて、菟糸子には、補腎固摂の作用が有ります。
固摂とは、あるべき位置に留める力です。
血液が血管の中に留まっていたり、
内臓が決まった位置に存在できるのは固摂作用のおかげです。
従って、不正出血、寝汗、胃下垂、流産の予防などにも応用できます。

◎亀鹿霊仙廣(きろくれいせんこう)
・補陽薬:鹿角膠(ろっかくきょう)→甘鹹、温、補腎
・補気薬:人参(にんじん)→甘微苦、平
・補血薬:枸杞子(くこし)→甘、平
・補陰薬:亀板膠(きばんきょう)→甘鹹、寒、補腎
亀鹿霊仙廣も、活命参と同じく
無形のエネルギーを補う補陽薬、補気薬と
有形のものを補う補血薬、補陰薬の両方で構成されています。
特徴としては、潤す力が強い亀板膠が入っていることです。
そのため、皮膚の乾燥、皮膚の赤み、ドライアイなど乾燥の状態に応用しやすいです。
また、「温」の紅参ではなく、「平」の人参を使っています。
したがって、火照りなどの熱がある人にも使いやすくなっています。

◎複方霊黄参丸(ふくほうれいおうさんがん)
・芳香開竅薬:牛黄(ごおう)→苦甘、涼
・活血薬  :川芎(せんきゅう)→辛、温
・解表剤  :防風(ぼうふう)→辛、温、昇陽
・解表剤  :桂皮(けいひ)→辛、熱
・補陽薬  :鹿茸(ろくじょう)→甘鹹、温、補腎
・補気薬  :紅参(こうじん)→甘微苦、温
・補気薬  :甘草(かんぞう)→甘、平
・補血薬  :当帰(とうき)→甘辛苦、温
・補血薬  :芍薬(しゃくやく)→酸苦、微寒
これまでの製品は、「甘味」がメインだったのに対して、
複方霊黄参丸は、「甘味」と「辛味」の両方が入っていますので、
冷えを感じている人に使います。
ただし、防風には、昇陽作用があるため、
熱を上に持っていく力が強くなっています。
そのため、「のぼせ」を感じている方には、合わない場合が有ります。
一方で、顔色が白く、血が不足して起こる頭痛には汎用します。
実際、複方霊黄参丸で頭痛が治る方が多いです。
なお「のぼせ」がある場合は、首から上の熱を除くことが得意な
能活精という処方があってきます。

※能活精は上部に溜まったエネルギーを下へ下げる力が弱まっている時に有効です。
一方で、複方霊黄参丸はエネルギーを上部に持っていく力が弱まっている時に有効です。
(いずれにしても「弱まっている」=「疲労」が関与します。)
そのため、赤ら顔には能活精、顔が青白い場合には複方霊黄参丸が合うことが多いです。

次に「熱証」について、解説します。
特徴としては、
・体全体、もしくは患部に熱感を感じる。
・患部を冷やすと症状が軽減する。反対に温めると悪化する。
・鼻水や痰などの分泌物や、小便などの排泄物は
色が濃くなり、量が減る。
・じっとすることが出来ず、イライラしやすい。

また「寒証」の場合と同じく、
原因によって、「虚証」と「実証」に分けられます。

自分で体を冷やす力が低下して、「熱証」になれば、「虚熱証」と言います。
漢方では、「陰」が不足している「陰虚」の状態で「虚熱証」になりやすいです。
従って、「陰」を補う「補陰」の使用となりますが、これは「甘味」のものが多いです。

「実熱証」では、外から熱が侵入してきています。
したがって、入ってくる熱を分散する必要があります。
漢方では、清熱というものを使い、これは苦い物が多いです。

なお、「甘味」には潤す力、「苦味」には乾燥させる力があります。
例えば、湿度と熱の両方が体に籠っている時は、「苦味」が有効です。
もちろん、どちらかに偏りすぎると、余計な水が残ったり、乾燥しすぎたりするので、
バランスを取ることが必要です。

ここで、涼性の伝統生薬研究会製品を比較してみます。

◎霊黄参(れいおうさん)
・芳香開竅薬:牛黄(ごおう)→苦甘、涼
・補気薬:人参(にんじん)→甘微苦、平

◎律鼓心(りっこしん)
・      蟾酥(せんそ)→甘辛、温
・芳香開竅薬:牛黄(ごおう)→苦甘、涼
・芳香開竅薬:龍脳(りゅうのう)→辛苦、微寒
・平肝熄風薬:羚羊角(れいようかく)→鹹、寒
・重鎮安神薬:真珠(しんじゅ)→甘鹹、寒
・補陽薬  :鹿茸(ろくじょう)→甘鹹、温、補腎
・補気薬  :人参(にんじん)→甘微苦、平
・     :動物胆
※熄風(そくふう)とはめまい、ふらつき、痙攣、震えなどの症状です。
※鹹味(かんみ)とは塩辛い味です。

◎救心感応丸 氣
・芳香開竅薬:麝香(じゃこう)→辛、温
・芳香開竅薬:牛黄(ごおう)→苦甘、涼
・平肝熄風薬:羚羊角(れいようかく)→鹹、寒
・理気薬  :沈香(じんこう)→辛苦、温
・補気薬  :人参(にんじん)→甘微苦、平
・       :動物胆、ウルソデオキシコール酸

◎能活精
・芳香開竅薬:龍脳(りゅうのう)→辛苦、微寒
・平肝熄風薬:羚羊角(れいようかく)→鹹、寒
・重鎮安神薬:真珠(しんじゅ)→甘鹹、寒
・養心安神薬:遠志(おんじ)→辛苦、温
・理気薬  :沈香(じんこう)→辛苦、温
・活血薬  :サフラン→甘、微寒
・補気薬  :紅参(こうじん)→甘微苦、温

救心感応丸 氣は、芳香開竅薬の割合が多いため、
「閉証(へいしょう)」に良く使います。
閉証では、筋肉の強張りや、胸の苦しさ、膨満感、呼吸の乱れなどがあります。
また症状は変化しやすく、精神的な刺激を受けた時に悪化しやすいです。

一方、能活精は頭部に籠った熱を除く力が強いです。
熱は上に登っているので、上半身、特に頭部にこもりがちです。
このような時、焦りや不安、不眠・物忘れなどが出やすいです。
加えて、虚証(午後に疲れやすいなど)が見られれば能活精を使用します。
能活精は、鎮静して気持ちを落ち着かせ、かつ元気にさせる処方です。
これらの症状に加えて、閉証が見られた場合は、
能活精をベースにして、精神的な刺激を受けた時などに
救心感応丸 氣を頓服で加える方法も有効です。

なお、上部に熱が籠って、目が充血したり、
目の周りが腫れるような症状にも能活精が有効です。
能活精には、上部の熱を除く作用があることに加え、
平肝熄風薬である羚羊角には、明目作用があり、
重鎮安神薬である真珠は、目の諸症状に応用します。

一方で、老化に伴う目の問題には、明目作用がある
枸杞や菟糸子が良いので、活命参を応用します。
(ドライアイがあれば、亀板を併用します。)

最後に養生薬として使える漢方について解説します。
漢方で行うことは、扶正袪邪(ふせいきょじゃ)です。
扶正(ふせい)とは、正気を補うことです。
正気とは病気の原因となる邪気に対抗して健康を維持する力です。
自分が本来持っているものが不足している「虚証」に対応します。
ここで使用するものが養生薬です。

一方、袪邪(きょじゃ)とは病気の原因である邪気を除くことです。
原因を起こすものがある「実証」に対応します。
ここで使用するものは治療薬です。

症状が無くなれば、治療薬は必要がなくなり、養生薬をメインにしていきます。
症状がぶり返すのは、養生がうまく言っていないからという考えがあり、
普段から養生薬を活用することで、病気の予防を行います。

これまでに紹介した、複方霊黄参丸と亀鹿霊仙廣は養生に適した処方となります。

◎複方霊黄参丸(ふくほうれいおうさんがん)
・芳香開竅薬:牛黄(ごおう)→苦甘、涼
・活血薬  :川芎(せんきゅう)→辛、温
・解表剤  :防風(ぼうふう)→辛、温、昇陽
・解表剤  :桂皮(けいひ)→辛、熱
・補陽薬  :鹿茸(ろくじょう)→甘鹹、温、補腎
・補気薬  :紅参(こうじん)→甘微苦、温
・補気薬  :甘草(かんぞう)→甘、平
・補血薬  :当帰(とうき)→甘辛苦、温
・補血薬  :芍薬(しゃくやく)→酸苦、微寒

◎亀鹿霊仙廣(きろくれいせんこう)
・補陽薬:鹿角膠(ろっかくきょう)→甘鹹、温、補腎
・補気薬:人参(にんじん)→甘微苦、平
・補血薬:枸杞子(くこし)→甘、平
・補陰薬:亀板膠(きばんきょう)→甘鹹、寒、補腎

亀鹿霊仙廣は、甘味がメインで、正気(せいき)が不足する虚証を改善します。
この正気は、陽気(気)と陰気(血と水)からなりますが、
亀鹿霊仙廣はこの全てを補うことができます。
加えて、「陰」が不足すると見た目は元気でもイライラする症状が出やすく
このような場合は、効き方を実感しづらいですが、気長に服用してもらうのが良いです。

一方で、病気の原因があれば、亀鹿霊仙廣を単品で使用せずに、
原因を除く処方と併用する必要があります。
例えば、
実熱証があれば、亀鹿霊仙廣+霊黄参
実寒証があれば、亀鹿霊仙廣+霊鹿参

また、消化吸収が比較的悪い処方でもあるので、胃腸の機能が低下している場合は、
胃腸を改善する処方を併用するのが良いです。

また鹿角膠や亀板膠には止血作用があります。
このため、不正出血や生理後の出血が続く場合は、亀鹿霊仙廣を併用するのが良いです。
併用するものとしては、止血として当帰と黄耆の組み合わせが有効ですので、
補中益気湯を汎用します。他には、田七人参(三七人参)も使います。

複方霊黄参丸は気と血を補う力に加え、エネルギーを上に
持っていく傾向になります。
(亀鹿霊仙廣は下半身が得意です。)
このため、頭をつかすぎで、頭がパンパンになっている感じがあれば、
複方霊黄参丸は使用せず、能活精を使うのが良いです。

なお血を強力に補う複方霊黄参丸は比較的若い方向きで、
精を補う亀鹿霊仙廣は年配向きですが、
乾燥が見られれば、年齢に関係なく亀鹿霊仙廣はします。

2021/09/18

伝統生薬研究会の製品の使い分け

「伝統生薬研究会製品」は、牛黄や麝香を始め、非常に貴重な動物性生薬を
中心に配合した漢方薬で、インターネットなどによる通信販売はされておりません。
日ごろから東洋医学や生薬について知識を高めあう薬局・薬店で構成された会である、
「伝統生薬研究会」の会員のみが、取扱うことが出来ます。

伝統生薬研究会製品には、牛黄製剤である霊黄参、麝香製剤である
救心感応丸 氣、鹿茸製剤である霊鹿参など10種類の製品があります。
これらの製品を使い分けることで、様々な症状に対応することが可能です。

まずは、「体を温める」もしくは「体の熱を除く」視点から、
製品の分類を行います。

そのためには、「寒証」と「熱証」について知る必要があります。
わかりやすく言えば、「寒証」は寒さがある状態、「熱証」は熱がある状態です。
本来は、「寒証」にも「熱証」にも傾かない真ん中、漢方でいうところの
「中庸(ちゅうよう)」という状況が理想です。
ただし、どちらかの性質に傾くことが多いです。

また別の視点から原因によって、「虚証」と「実証」に分けられます。

自分が本来持っているものが不足している場合は「虚」、
原因を起こすものがある場合を「実」と言います。
良く、体が痩せている場合は、「虚」、
体がしっかりしている場合は、「実」だと言われますが、
それは、判断基準の一つに過ぎません。

例えば、自分の免疫力の低下が原因で病気になれば、「虚証」です。
一方で、外からウイルスが入って病気になれば、「実証」です。

「寒証」を例にすると、体を温めるものが不足して、冷えてしまえば、「虚寒証」
気温が低すぎて、体が冷えれば、「実寒証」となります。
ただし、「虚」と「実」は混ぜることが多いです。

体を温めるものが不足しているし、かつ外が寒いため
体が冷えてしまっているような状況です。
外の気温が同じぐらい寒いとしても、体が冷える人もいれば、
全然平気な人もいます。

当然、温める力が不足している人ほど、外の寒さの影響を
受けやすくなるので、「虚証」と「実証」は混ざりやすいのです。
最初の例で言えば、免疫力が低下している人(虚の状態)ほど、
それから入ってきたウイルス(実)の影響を受けやすいです。

また傾向として、「虚証」の場合、疲労時に悪化して、休むと軽減します。
朝は比較的、症状が軽いのに、夕方になって疲れてくると悪化するなどです。
一方、「実証」の場合、原因を取り除くことで、改善します。
寒さが原因であれば、部屋を温めることでも改善します。
ウイルスが原因であれば、ウイルスと接触しなければ当然病気になりません。
仕事のストレスが原因であれば、仕事の量を減らすことで改善します。

次に寒証の特徴ですが、
・寒冷の感覚がある(実寒証では感じにくいこともあります)。
・患部を温めると症状が軽減する。反対に冷やすと悪化する。
・鼻水や痰などの分泌物や、小便などの排泄物は
色が薄くなり、量が増える。
・消極的な態度になる
・痛みがある場合、引きつったような痛みや絞られるような痛みが出やすい。
これは、冷えや血量の低下によって、筋肉が柔らかさを失うためです。

対応の方法は、上記の通り、
「虚」の場合は、不足しているものを除き、
「実」の場合は、原因を除きます。

「虚寒証」では、自分で体を温める力が低下しています。
したがって、自分で温める力を補います。
漢方では、補陽薬というものを使い、これは甘い物が多いです。

「実寒証」では、外から寒さが侵入してきています。
したがって、熱を加えつつ、入ってくる寒さを分散して防ぎます。
漢方では、温裏散寒というものを使い、これは辛い物が多いです。
ここで言う「裏」とは体の深い部分を指し、「温裏」とは内臓などの
深い部分を温めることを言います。
なお皮膚など体の表面に近い部分は「表」と表現します。

すなわち
「虚寒証」→「甘味」で対応
「実寒証」→「辛味」で対応
となりますが、上記の通り、「虚」と「実」は混ざります。
従って、最初は「辛味」+「甘味」で対応して、「寒証」を
出来るだけ早く解消し、その後は「甘味」によって、
自分の体を温めることが出来るようにしていくことが多いです。

ここで、温性の伝統生薬研究会製品を比較してみます。
温性の薬として、霊鹿参(れいろくさん)、活命参(かつめいさん)、
亀鹿霊仙廣(きろくれいせんこう)、複方霊黄参丸(ふくほうれいおうさんがん)
などが有ります。

霊鹿参、活命参、亀鹿霊仙廣は、「甘味」がメインです。
一方、複方霊黄参丸は、「辛味」+「甘味」となっているので、
冷えを自覚している人は、複方霊黄参丸で冷えを除くことが多いです。

◎霊鹿参(れいろくさん)
・補陽薬:鹿茸(ろくじょう)→甘鹹、温、補腎
・補気薬:紅参(こうじん)→甘微苦、温
※鹹(かん)は、塩からい味を指します。
補陽薬と補気薬は、目に見えない無形のエネルギーを補うものです。
したがって、疲労、寒がり、息切れなどに使用します。

◎活命参(かつめいさん)
・補陽薬:鹿茸(ろくじょう)→甘鹹、温、補腎
・補陽薬:菟糸子(としし)→辛甘、温、補腎固摂(ほじんこせつ)
・補気薬:紅参(こうじん)→甘微苦、温
・補血薬:枸杞子(くこし)→甘、平
霊鹿参に、補陽薬と補血薬が加わっています。
補血薬は、ともに有形のものを補います。
つまり体の物質的な不足状態を解消するので、
例えば、乾燥、月経量の低下、精子の量の低下などに使用します。
加えて、菟糸子には、補腎固摂の作用が有ります。
固摂とは、あるべき位置に留める力です。
血液が血管の中に留まっていたり、
内臓が決まった位置に存在できるのは固摂作用のおかげです。
従って、不正出血、寝汗、胃下垂、流産の予防などにも応用できます。

◎亀鹿霊仙廣(きろくれいせんこう)
・補陽薬:鹿角膠(ろっかくきょう)→甘鹹、温、補腎
・補気薬:人参(にんじん)→甘微苦、平
・補血薬:枸杞子(くこし)→甘、平
・補陰薬:亀板膠(きばんきょう)→甘鹹、寒、補腎
亀鹿霊仙廣も、活命参と同じく
無形のエネルギーを補う補陽薬、補気薬と
有形のものを補う補血薬、補陰薬の両方で構成されています。
特徴としては、潤す力が強い亀板膠が入っていることです。
そのため、皮膚の乾燥、皮膚の赤み、ドライアイなど乾燥の状態に応用しやすいです。
また、「温」の紅参ではなく、「平」の人参を使っています。
したがって、火照りなどの熱がある人にも使いやすくなっています。

◎複方霊黄参丸(ふくほうれいおうさんがん)
・芳香開竅薬:牛黄(ごおう)→苦甘、涼
・活血薬  :川芎(せんきゅう)→辛、温
・解表剤  :防風(ぼうふう)→辛、温、昇陽
・解表剤  :桂皮(けいひ)→辛、熱
・補陽薬  :鹿茸(ろくじょう)→甘鹹、温、補腎
・補気薬  :紅参(こうじん)→甘微苦、温
・補気薬  :甘草(かんぞう)→甘、平
・補血薬  :当帰(とうき)→甘辛苦、温
・補血薬  :芍薬(しゃくやく)→酸苦、微寒
これまでの製品は、「甘味」がメインだったのに対して、
複方霊黄参丸は、「甘味」と「辛味」の両方が入っていますので、
冷えを感じている人に使います。
ただし、防風には、昇陽作用があるため、
熱を上に持っていく力が強くなっています。
そのため、「のぼせ」を感じている方には、合わない場合が有ります。
一方で、顔色が白く、血が不足して起こる頭痛には汎用します。
実際、複方霊黄参丸で頭痛が治る方が多いです。
なお「のぼせ」がある場合は、首から上の熱を除くことが得意な
能活精という処方があってきます。

※能活精は上部に溜まったエネルギーを下へ下げる力が弱まっている時に有効です。
一方で、複方霊黄参丸はエネルギーを上部に持っていく力が弱まっている時に有効です。
(いずれにしても「弱まっている」=「疲労」が関与します。)
そのため、赤ら顔には能活精、顔が青白い場合には複方霊黄参丸が合うことが多いです。

次に「熱証」について、解説します。
特徴としては、
・体全体、もしくは患部に熱感を感じる。
・患部を冷やすと症状が軽減する。反対に温めると悪化する。
・鼻水や痰などの分泌物や、小便などの排泄物は
色が濃くなり、量が減る。
・じっとすることが出来ず、イライラしやすい。

また「寒証」の場合と同じく、
原因によって、「虚証」と「実証」に分けられます。

自分で体を冷やす力が低下して、「熱証」になれば、「虚熱証」と言います。
漢方では、「陰」が不足している「陰虚」の状態で「虚熱証」になりやすいです。
従って、「陰」を補う「補陰」の使用となりますが、これは「甘味」のものが多いです。

「実熱証」では、外から熱が侵入してきています。
したがって、入ってくる熱を分散する必要があります。
漢方では、清熱というものを使い、これは苦い物が多いです。

なお、「甘味」には潤す力、「苦味」には乾燥させる力があります。
例えば、湿度と熱の両方が体に籠っている時は、「苦味」が有効です。
もちろん、どちらかに偏りすぎると、余計な水が残ったり、乾燥しすぎたりするので、
バランスを取ることが必要です。

ここで、涼性の伝統生薬研究会製品を比較してみます。

◎霊黄参(れいおうさん)
・芳香開竅薬:牛黄(ごおう)→苦甘、涼
・補気薬:人参(にんじん)→甘微苦、平

◎律鼓心(りっこしん)
・      蟾酥(せんそ)→甘辛、温
・芳香開竅薬:牛黄(ごおう)→苦甘、涼
・芳香開竅薬:龍脳(りゅうのう)→辛苦、微寒
・平肝熄風薬:羚羊角(れいようかく)→鹹、寒
・重鎮安神薬:真珠(しんじゅ)→甘鹹、寒
・補陽薬  :鹿茸(ろくじょう)→甘鹹、温、補腎
・補気薬  :人参(にんじん)→甘微苦、平
・     :動物胆
※熄風(そくふう)とはめまい、ふらつき、痙攣、震えなどの症状です。
※鹹味(かんみ)とは塩辛い味です。

◎救心感応丸 氣
・芳香開竅薬:麝香(じゃこう)→辛、温
・芳香開竅薬:牛黄(ごおう)→苦甘、涼
・平肝熄風薬:羚羊角(れいようかく)→鹹、寒
・理気薬  :沈香(じんこう)→辛苦、温
・補気薬  :人参(にんじん)→甘微苦、平
・       :動物胆、ウルソデオキシコール酸

◎能活精
・芳香開竅薬:龍脳(りゅうのう)→辛苦、微寒
・平肝熄風薬:羚羊角(れいようかく)→鹹、寒
・重鎮安神薬:真珠(しんじゅ)→甘鹹、寒
・養心安神薬:遠志(おんじ)→辛苦、温
・理気薬  :沈香(じんこう)→辛苦、温
・活血薬  :サフラン→甘、微寒
・補気薬  :紅参(こうじん)→甘微苦、温

救心感応丸 氣は、芳香開竅薬の割合が多いため、
「閉証(へいしょう)」に良く使います。
閉証では、筋肉の強張りや、胸の苦しさ、膨満感、呼吸の乱れなどがあります。
また症状は変化しやすく、精神的な刺激を受けた時に悪化しやすいです。

一方、能活精は頭部に籠った熱を除く力が強いです。
熱は上に登っているので、上半身、特に頭部にこもりがちです。
このような時、焦りや不安、不眠・物忘れなどが出やすいです。
加えて、虚証(午後に疲れやすいなど)が見られれば能活精を使用します。
能活精は、鎮静して気持ちを落ち着かせ、かつ元気にさせる処方です。
これらの症状に加えて、閉証が見られた場合は、
能活精をベースにして、精神的な刺激を受けた時などに
救心感応丸 氣を頓服で加える方法も有効です。

なお、上部に熱が籠って、目が充血したり、
目の周りが腫れるような症状にも能活精が有効です。
能活精には、上部の熱を除く作用があることに加え、
平肝熄風薬である羚羊角には、明目作用があり、
重鎮安神薬である真珠は、目の諸症状に応用します。

一方で、老化に伴う目の問題には、明目作用がある
枸杞や菟糸子が良いので、活命参を応用します。
(ドライアイがあれば、亀板を併用します。)

最後に養生薬として使える漢方について解説します。
漢方で行うことは、扶正袪邪(ふせいきょじゃ)です。
扶正(ふせい)とは、正気を補うことです。
正気とは病気の原因となる邪気に対抗して健康を維持する力です。
自分が本来持っているものが不足している「虚証」に対応します。
ここで使用するものが養生薬です。

一方、袪邪(きょじゃ)とは病気の原因である邪気を除くことです。
原因を起こすものがある「実証」に対応します。
ここで使用するものは治療薬です。

症状が無くなれば、治療薬は必要がなくなり、養生薬をメインにしていきます。
症状がぶり返すのは、養生がうまく言っていないからという考えがあり、
普段から養生薬を活用することで、病気の予防を行います。

これまでに紹介した、複方霊黄参丸と亀鹿霊仙廣は養生に適した処方となります。

◎複方霊黄参丸(ふくほうれいおうさんがん)
・芳香開竅薬:牛黄(ごおう)→苦甘、涼
・活血薬  :川芎(せんきゅう)→辛、温
・解表剤  :防風(ぼうふう)→辛、温、昇陽
・解表剤  :桂皮(けいひ)→辛、熱
・補陽薬  :鹿茸(ろくじょう)→甘鹹、温、補腎
・補気薬  :紅参(こうじん)→甘微苦、温
・補気薬  :甘草(かんぞう)→甘、平
・補血薬  :当帰(とうき)→甘辛苦、温
・補血薬  :芍薬(しゃくやく)→酸苦、微寒

◎亀鹿霊仙廣(きろくれいせんこう)
・補陽薬:鹿角膠(ろっかくきょう)→甘鹹、温、補腎
・補気薬:人参(にんじん)→甘微苦、平
・補血薬:枸杞子(くこし)→甘、平
・補陰薬:亀板膠(きばんきょう)→甘鹹、寒、補腎

亀鹿霊仙廣は、甘味がメインで、正気(せいき)が不足する虚証を改善します。
この正気は、陽気(気)と陰気(血と水)からなりますが、
亀鹿霊仙廣はこの全てを補うことができます。
加えて、「陰」が不足すると見た目は元気でもイライラする症状が出やすく
このような場合は、効き方を実感しづらいですが、気長に服用してもらうのが良いです。

一方で、病気の原因があれば、亀鹿霊仙廣を単品で使用せずに、
原因を除く処方と併用する必要があります。
例えば、
実熱証があれば、亀鹿霊仙廣+霊黄参
実寒証があれば、亀鹿霊仙廣+霊鹿参

また、消化吸収が比較的悪い処方でもあるので、胃腸の機能が低下している場合は、
胃腸を改善する処方を併用するのが良いです。

また鹿角膠や亀板膠には止血作用があります。
このため、不正出血や生理後の出血が続く場合は、亀鹿霊仙廣を併用するのが良いです。
併用するものとしては、止血として当帰と黄耆の組み合わせが有効ですので、
補中益気湯を汎用します。他には、田七人参(三七人参)も使います。

複方霊黄参丸は気と血を補う力に加え、エネルギーを上に
持っていく傾向になります。
(亀鹿霊仙廣は下半身が得意です。)
このため、頭をつかすぎで、頭がパンパンになっている感じがあれば、
複方霊黄参丸は使用せず、能活精を使うのが良いです。

なお血を強力に補う複方霊黄参丸は比較的若い方向きで、
精を補う亀鹿霊仙廣は年配向きですが、
乾燥が見られれば、年齢に関係なく亀鹿霊仙廣はします。