


「痩せる?」と話題の五苓散の副作用を漢方医が解説!


痩せる効果が期待できる話題になっている五苓散は、さまざまな身体の不調に処方されますが、「やせ薬」ではないため減量効果を期待するものではありません。
では、なぜ「痩せる」と言われているのでしょうか。
本記事では、痩せるといわれている五苓散の副作用について、漢方医が詳しく解説します。
併せて、「痩せる」と話題になった理由や副作用が出た場合の対処法についても解説します。
誤った服用の仕方をしないために、ぜひ参考にしてください。
目次
五苓散で起こりやすい副作用と症状

五苓散が痩せるといわれる所以は、漢方薬のなかでも比較的副作用が少ないとされているため手にしやすく、「水太り」に悩まれている方のむくみを改善することでスッキリとした印象を抱きやすいことからです。
しかし、五苓散にも副作用は存在し、服用には注意が必要です。
五苓散で起こりやすい副作用と症状を解説します。
主な副作用
五苓散による主な副作用は、以下の3つです。
- ・胃腸障害(腹痛・胃もたれ・下痢)
- ・発疹・かゆみ(アレルギー反応)
- ・めまいや倦怠感(体調変化)
副作用は服用される方の症状や体質などによって異なりますが、上記のような過敏症が現れることがあります。
なかでもアレルギー反応は五苓散に含まれる成分によるもので、含まれているシナモン(桂皮)アレルギーのある方に現れることがあります。
重篤な副作用と症状の見分け方
副作用が現れた場合、前述した過敏症のほかに、重篤な状態になるケースがあります。副作用のなかでも重篤といわれるものは、主に以下の2つです。
- ・偽アルドステロン症:むくみの悪化や血圧の上昇
- ・肝機能障害:黄疸や強い倦怠感
五苓散の成分は、以下の5つです。
桂皮(ケイヒ) | 沢瀉(タクシャ) | 猪胆粉(チョレイ) |
白茯苓(ブクリョウ) | 白朮(ビャクジュツ) | ー |
偽アルドステロン症を引き起こす甘草(カンゾウ)は含まれていませんが、甘草に含まれるグリチルリチンが含まれている他の薬を併用した場合、偽アルドステロン症になる可能性があります。
また、肝機能障害を引き起こす可能性もあります。
そのため、長期にわたって服用する場合は黄疸や強い倦怠感が出る可能性もあるため注意が必要です。
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五苓散の副作用が出ないようにするための注意点

副作用によっては重篤な状態になりかねない五苓散は、考えられる副作用を考慮したうえで正しい服用をする必要があります。
具体的な注意点を解説します。
用法・用量を厳守する
五苓散に限らず、お薬を服用するうえで重要なことは定められた用法・用量を厳守することです。
一般的な五苓散の飲み方は以下のとおりです。
- ・1日に2〜3回、決められた回数・量をみずかぬるま湯で服用する
- ・顆粒タイプで飲みにくい場合はぬるま湯に溶かして服用する
- ・飲み忘れに気づいたら、すぐに服用する(次の服用時間が近い場合は服用しない)
処方薬も市販薬も必ず服用回数や用量が定められているため、指示に従って服用するようにしてください。
服用禁忌を理解しておく
比較的副作用が少ないといわれている五苓散ですが、以下に該当する方は服用に注意が必要です。
- ・生後3ヶ月未満の乳児
- ・妊娠中や妊娠の可能性がある人
- ・過去に食品や薬品でアレルギー症状を起こしたことのある人
生後3ヶ月未満の乳児の場合、副作用が出るリスクが大人よりも高くなります。
生後3ヶ月以上でも、1歳未満の場合は医師や薬剤師の判断に従いましょう。
また、妊娠中や妊娠の可能性のある方の服用も注意が必要です。
むくみが気になり五苓散の検討をされる方もいらっしゃいますが、この時期は体が変化しやすく敏感になるため、必ず主治医や薬剤師へ相談をしてください。
過去に食品や薬品によるアレルギーを起こした方も、成分を確認したうえで、医師や薬剤師へ相談をしましょう。
五苓散に含まれる成分のなかでもシナモン(桂皮)にアレルギーのある方は少なくありません。
長期・多量服用は避ける
副作用が出ないからと長期間服用したり、効果が足りないと多量に服用したりすることは避けましょう。
五苓散には利尿作用があり、服用を続けることで体内の水分量が減り、脱水状態になることがあります。
また、まれに下痢や胃の不調といった症状が現れることもあります。この場合も水分が低下する恐れがあります。
五苓散の副作用が起きたときの適切な対処法

五苓散の服用によって副作用が起きてしまった場合、適切な対処をすることで重篤化を予防できることがあります。
具体的な対処法を解説します。
直ちに服用を中止する
五苓散の服用を始めてから身体に異変が起きた場合、副作用の可能性があります。
まずはすぐに服用を中止してください。状態が落ち着かないようなら、すぐに病院を受診しましょう。
医師や薬剤師の相談する
医師や薬剤師への相談も、対処法の一つです。
例えばすでに服用しているお薬がある場合、相互作用で副作用が起きている可能性があります。
また、肝機能に異変が起きているときは病院の検査を受けないと原因がわからないケースが少なくありません。
薬剤師へ相談するときは、漢方専門の薬剤師へ相談することをおすすめします。
相談するときは「五苓散を服用している」ことを伝えたうえで、身体の不調を相談しましょう。
また、五苓散と併用したり一時的に服用したお薬がある場合は、同時に伝えると判断がしやすくなります。
アレルギー症状が強い場合は救急受診も検討
アレルギーの症状や状態によって異なりますが、放置しておくことでアナフィラキシーと呼ばれる状態になる可能性もあります。
アレルギー症状が強く出てしまったときは、救急受診の検討もしてください。
関連記事:漢方の効き目とは?効果を引き出す正しい使い方と選び方を紹介
五苓散との飲み合わせや食べ合わせで注意する点

五苓散を服用する際は、他のお薬との併用や食べ合わせなど、注意していただきたい点があります。
それぞれ詳しく解説します。
西洋薬との併用
西洋薬と併用する場合、大きな問題はありませんが解熱鎮痛剤や利尿剤との併用には注意が必要です。
五苓散は体内の水分を調整するため、気候の変化による頭痛、偏頭痛や生理痛などにも効果があります。
重複した効果をもつ西洋薬と併用することで効果が高くなりすぎ、反対に不調を引き起こすことがあります。
また、西洋薬の利尿剤と併用するケースもありますが、ネフローゼや心臓疾患のある方の場合は過度な脱水状態になるリスクがあります。
西洋薬との併用は基本的に問題はありませんが、上記のように弊害を生じる可能性があるため、医師や薬剤師へ相談をしましょう。
他の漢方薬との併用
漢方薬同士の併用の場合、以下のように成分が重複している漢方薬との併用はしないでください。
- ・麻黄湯、小青竜湯(桂皮が重複)
- ・抑肝散、加味逍遙散、猪苓湯、当帰芍薬散、補中益気湯(茯苓、蒼朮または白朮、猪苓などが重複)
成分が重複している漢方薬を併用した場合、尿量の増加による脱水や、過敏症を発症する恐れがあります。
漢方薬同士の併用をするときは、必ず医師や薬剤師に相談してください。
食べ合わせの注意点
五苓散と食物との食べ合わせは特に問題はありませんが、シナモン(桂皮)には注意が必要です。
すでにシナモンアレルギーを発症している方は症状が重篤化するリスクがあります。
また、アレルギーのない方もシナモンを多く摂取し続けることでアレルギーを発症する可能性があります。
まとめ
五苓散の服用によって「痩せる」と話題になっていますが、痩せるための薬ではありません。
実際には体内水分量を調整してむくみや頭痛など身体の不調を改善し、その結果スッキリとした印象を抱きやすいといった効果が期待できる漢方薬です。
そのため服用には注意が必要で、服用するタイミングや併用するお薬など、注意が必要です。
五苓散による不調の改善を検討されている方は、漢方薬専門の薬剤師への相談がおすすめです。
雲龍堂は漢方薬専門の調剤薬局として、患者様一人ひとりの不調に合わせたオーダーメイドの漢方薬の処方を提供いたします。
身体の不調で動きにくい方や遠方の方のために、オンラインでの無料相談も行っています。
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この記事の監修薬剤師
運龍堂 佐藤貴繁
略歴
1977年 北海道生まれ。北海道立札幌南高等学校
北海道大学薬学部を卒業
2003年 薬剤師免許を取得
2006年 北海道大学大学院薬学研究科生体分子薬学
専攻博士後期課程を終了後、博士(薬学)取得
2011年 福祉社会法人 緑仙会理事 就任
2012年 杜の都の漢方薬局 運龍堂 開局
2013年 宮城県自然薬研究会会長 就任
2017年 宮城県伝統生薬研究会会長 就任


