釣藤散が合わない人の特徴とは?自律神経失調症に効果がある?
「朝起きたときに頭が痛い」「めまいや頭重感がある」といった症状が見られる場合、高血圧が起因しているおそれがあります。
このような高血圧の諸症状に有効な漢方薬のひとつに「釣藤散(チョウトウサン)」があります。
しかし、飲み続けているのに効果が現れないというケースも少なくありません。
本記事では、釣藤散に含まれる生薬や期待される効果、合わない人の特徴や副作用などもご紹介します。
目次
釣藤散とは
釣藤散(チョウトウサン)とは、以下の11種類の生薬を配合した漢方薬です。
生薬の種類と主な効能は以下の通りです。
- 釣藤鈎(チョウトウコウ):血圧を下げる
- 菊花(キクカ):釣藤鈎の働きを助ける
- 石膏(セッコウ):釣藤鈎の働きを助ける
- 半夏(ハンゲ):水分代謝を高める
- 陳皮(チンピ):胃腸の働きを高める
- 茯苓(ブクリョウ):水分代謝を高める
- 甘草(カンゾウ):痛みや炎症を鎮める
- 生姜(ショウキョウ):血行を促進する
- 人参(ニンジン):疲労回復・消化を促す
- 防風(ボウフウ):血圧を下げる・炎症を鎮める
- 麦門冬(バクモンドウ):皮膚や粘膜の乾燥を防ぐ
上記のうち釣藤鈎は血圧の上昇を抑える働きがあるほか、菊花や石膏は釣藤鈎の作用を高める効果もあります。
そのため、高血圧を原因とした頭痛やめまいなどのさまざまな症状を緩和し、体のバランスを整えるために処方されることの多い漢方薬です。
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釣藤散の効果
釣藤散は高血圧に伴う諸症状を改善する漢方薬ですが、具体的にどういった症状に対応できるのでしょうか。主な効果をご紹介します。
頭痛・めまいの軽減
高血圧は自覚症状がないケースが多いですが、脳出血などの合併症が原因で頭痛やめまいなどを引き起こすことがあります。
特に起床時に頭が痛くなったり、頭重感を感じたりするのが典型的な症状です。
釣藤散に含まれる生薬は血圧を正常化する働きがあるため、継続的に服用することで高血圧を起因とした頭痛、めまいなどの症状を緩和できる可能性があります。
特に40代以降になると、高血圧に伴うさまざまな症状が現れやすくなります。
このような自覚症状がある場合には、生活習慣の見直しと釣藤散を服用してみることがおすすめです。
肩こりの軽減
頭痛やめまい以外に高血圧に伴う症状として多いのが、肩こりです。
肩こりは慢性的な運動不足や加齢などが原因と思われがちですが、実はその背後に高血圧が関連しているケースは少なくありません。
釣藤散を服用することで血圧が下がり、頭痛・めまいのほか肩こりも緩和される可能性があります。
精神の安定
自律神経の乱れが高血圧につながるケースもあります。
慢性的なストレスや不規則な生活、睡眠不足、あるいは加齢などが原因で自律神経が乱れることが多いです。
特に女性の場合は更年期障害の症状として、精神が不安定になりがちです。
釣藤散に含まれる釣藤鈎や茯苓、甘草には精神を安定させる効果もあるため、特に理由もなくイライラしがちな人には有効な漢方薬のひとつといえるでしょう。
釣藤散は自律神経失調症に効果がある?
釣藤散は、自律神経失調症の症状を緩和するために処方されることもあります。
自律神経はストレスや生活習慣などが原因で乱れることが多く、自律神経失調症が重症化すると頭痛や耳鳴り、肩こりなどが現れます。
また、これらの症状は毎日現れるとは限らず、症状の程度や頻度には個人差があります。
そのため、体の不調を感じているものの、自律神経失調症であると自覚していない人も多いのです。
現時点で自律神経失調症を治すための特効薬はありません。
そのため、ストレスの根本原因をなくしたり生活習慣を見直したりといった対策を講じながら長期間にわたって治療を続けていくほかありません。
釣藤散を服用することで辛い症状が緩和され、長期間の治療も継続しやすくなります。
釣藤散とセロトニンの関係性
自律神経失調症をはじめとした精神的な不調は、セロトニンとよばれるホルモン物質が影響しているといわれています。
セロトニンは私たちの脳内に存在し、精神的な安定を保ち自律神経を調整する重要な働きを担っています。
しかし、何らかの原因によってセロトニンが不足すると自律神経の調整ができなくなり、イライラや不安を感じやすくなるのです。
セロトニンの分泌を増やすためには、適度な運動やバランスのとれた食事、日光を浴びるなどの方法が一般的です。
これに加えて、釣藤散にもセロトニンと同等の作用があることが分かっており、継続的に服用することで精神的な安定を取り戻せる可能性があります。
多くの心療内科で処方される西洋薬に比べると釣藤散の作用は弱い傾向にありますが、副作用が少ないメリットもあり近年注目されています。
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釣藤散が合わない人の特徴
釣藤散は効果が緩やかで比較的安全性が高い薬といえますが、服用にあたっては注意すべきポイントもあります。
特に以下に該当する方は釣藤散が合わない可能性も考えられるため、医師や薬剤師へ相談するか服用を避けましょう。
冷え性の人
釣藤散は高血圧を伴う頭痛や肩こりに効果を発揮する漢方薬ですが、これらの症状は冷え性でも現れることがあります。
冷え性は血行不良が原因で起こる場合が多いため、この場合は釣藤散ではなく「呉茱萸湯(ゴシュユトウ)」という漢方薬が適しています。
胃腸が弱い人
もともと胃腸が弱い人の場合、釣藤散に含まれる生薬が胃腸を刺激し、胃炎や下痢などの症状を悪化させるおそれがあります。
自身の判断で服用する前に、医師または薬剤師に事前に相談しましょう。
特定の持病がある人
心臓病や腎臓病など、特定の疾患があり治療中の方は、薬の飲み合わせによって症状を悪化させる危険性もあります。
上記の疾患以外にも何らかの持病がある場合には、必ず医師または薬剤師へ相談しておくことが大切です。
妊娠中の人
妊娠中、または妊娠の可能性がある方の場合、薬を服用することで胎児に健康上の影響が及ぶ危険性があるため、事前に医師または薬剤師へ相談してください。
高齢者
高齢になると消化器官の働きが低下したり、体質によっては手足のしびれや筋肉のけいれんなどの症状を引き起こすおそれもあります。
特に、これまで漢方薬を服用したことで何らかの症状が現れた経験がある方は医師または薬剤師へ相談しましょう。
釣藤散の副作用
釣藤散は西洋薬とは異なり、比較的副作用のリスクが低く安全な薬といわれています。
しかし、すべての人に副作用の心配がないというわけではなく、まれに以下のような症状が現れるケースもあります。
釣藤散を服用した後で何らかの異常が見られた場合には、ただちに服用を中止し医師の診察を受けてください。
消化器症状
胃腸が弱い方に起こりやすい副作用が、消化器系の症状です。
具体的には食欲不振や胃のむかつき、胃もたれ、下痢や便秘などが挙げられます。
比較的軽度の副作用ではありますが、重症化するおそれもあるため医師の診察を受けましょう。
皮膚症状
皮膚に現れる副作用として代表的なのは、発疹や赤み、かゆみなどの症状です。
軽度の皮膚症状であれば服用を続けているうちに慣れてくることもありますが、まずは念のため医師の診察を受けたうえで服用を続けて良いか判断してもらいましょう。
偽アルドステロン症
偽アルドステロン症とは、高血圧の原因となるアルドステロンとよばれるホルモンが増加していないにもかかわらず、血圧が上昇したり低カリウム血症などが起こる症状です。
釣藤散をはじめとして、さまざまな漢方薬に含まれる甘草が原因で発症することが多いです。
治療をせず放置しておくと、手足のしびれやこわばり、脱力感、筋肉痛、こむら返りなどが現れることがあります。
ミオパチー
ミオパチーとは、筋肉の低下や萎縮、痛み、炎症など、筋疾患の総称です。
原因は、遺伝的な要因によって発症する先天性ミオパチーや、何らかの疾患をきっかけに発症する代謝性ミオパチーがあります。
また、薬の服用が原因で発症する薬剤性ミオパチーもあります。
偽アルドステロン症と同様に、甘草が体内に摂取されることで低カリウム血症を引き起こし、ミオパチーの症状が現れることも少なくありません。
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運龍堂では高血圧や更年期障害に効くオーダーメイド漢方薬を処方
釣藤散をはじめとした漢方薬は、ドラッグストアでも手軽に入手できますが「飲み続けているのに症状が改善されない」というケースもあります。
釣藤散の効き目は緩やかで西洋薬のような即効性はありませんが、もしかすると体質に合っていなかったり、症状にマッチしていない可能性も考えられます。
体の悩みや症状を改善するためには、漢方薬に精通した薬剤師に相談のうえ、自分の体質や症状に合った薬を処方してもらうことが大切です。
宮城県仙台市の漢方薬局「運龍堂」では、患者様一人ひとりの症状をヒアリングしたうえで、最適な生薬を組み合わせたオーダーメイドの漢方薬を処方しています。
今回ご紹介した高血圧や更年期障害、自律神経失調症に効く漢方薬も数多く取り揃えているため、まずはお気軽にご相談ください。
オンラインによる無料の漢方相談も行っているため、遠方でご来店が難しいという方もお気軽にご利用いただけます。
まとめ
高血圧の状態が続き適切な治療を受けないままでいると、脳出血や脳梗塞といった合併症を引き起こすリスクが増大します。
初期の段階では、自覚症状が見られないケースも多いです。
しかし、健康診断や人間ドックなどで高血圧を指摘された方は生活習慣を見直すとともに、漢方薬を服用してみることもおすすめです。
自分にどの漢方薬が適しているのか分からない方は、まずは一度運龍堂までお気軽にご相談ください。
この記事の監修薬剤師
運龍堂 佐藤貴繁
略歴
1977年 北海道生まれ。北海道立札幌南高等学校
北海道大学薬学部を卒業
2003年 薬剤師免許を取得
2006年 北海道大学大学院薬学研究科生体分子薬学
専攻博士後期課程を終了後、博士(薬学)取得
2011年 福祉社会法人 緑仙会理事 就任
2012年 杜の都の漢方薬局 運龍堂 開局
2013年 宮城県自然薬研究会会長 就任
2017年 宮城県伝統生薬研究会会長 就任