東洋医学と西洋医学の違いは?それぞれが活躍する場面とは
医療の世界には東洋医学と西洋医学という分野があり、基本的な考え方やアプローチ、治療法に大きな違いが見られます。
しかし、専門的な知識がない方にとって、両者は何が違うのか、どちらを選択すれば良いのか分からないケースも多いでしょう。
そこで本記事では、東洋医学と西洋医学の基本的な考え方やアプローチ、治療法の違いなどを解説するとともに、どういった場面で活躍するのかもご紹介します。
目次
東洋医学と西洋医学の違い
東洋医学と西洋医学にはどういった違いがあるのでしょうか。それぞれの歴史や基本的な考え方をご紹介しましょう。
東洋医学とは
東洋医学とは古代の中国で発展した歴史があり、日本には4世紀頃に伝来したといわれています。
東洋医学の基本的な考え方は、自然との関わりを重視しながら心身のバランスを整え、健康を維持するというものです。
西洋医学とは
西洋医学はヨーロッパで発達し、日本には16世紀半ばにポルトガルから伝来したとされています。
伝統的な知見や独自の理論に基づき発展してきた東洋医学に対し、西洋医学は近代的かつ科学的な医学分野といえます。
具体的な症状や状態、血圧・脈拍・体温、血液検査の結果やレントゲン画像など、客観的な数値・データを根拠に疾患の原因を探ります。
それらをもとに病気の診断、および治療を行うのが西洋医学の基本です。
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東洋医学と西洋医学のアプローチ方法の違い
上記でご紹介した通り、東洋医学と西洋医学は根本的な考え方に違いがあるため、疾患に対するアプローチ方法も異なります。
どのような方法で疾患を治療するのか、東洋医学と西洋医学のアプローチ方法の違いを詳しく解説しましょう。
東洋医学のアプローチ
東洋医学のアプローチ方法を一言で表すと、体全体のバランスを整えることで自己治癒力を高め健康を維持するというものです。
東洋医学では「気(き)・血(けつ)・水(すい)」とよばれる3つの要素があります。
これらのバランスが崩れることで体調が悪化したり、さまざまな疾患にかかりやすくなると考えられています。
そこで、これら3つのバランスを整えることで不調の根本原因を解消し、健康的な体質へと変化させることを目的としています。
また、東洋医学では気・血・水以外にも陰陽や五行といった理論が存在し、これらも体のバランスを整えるうえで重要な要素となります。
東洋医学の具体的な治療方法としては、鍼灸や指圧、漢方薬などが挙げられます。
特に漢方薬は自然由来の生薬で構成されているため、西洋薬に比べて副作用のリスクが低い傾向があります。
加えて、普段から服用した方が寿命を延ばす漢方薬も多数あります。
漢方の考えでは、服用し続けても毒性が無いものが良い薬とされます。
特に血流を改善するものは、普段からの服用を勧められるものが多いです。
有名な朝鮮人参も服用し続けると、赤血球の柔軟性を上げることで、血流や免疫力を改善し、寿命を延ばすとされます。
実際、韓国の疫学調査では、朝鮮人参を服用しつづけることで、胃がんや肺がんになるリスクが3分の1程度に減少することがわかっています。
運龍堂でも、このような漢方薬や生薬を推奨しています。
また、西洋薬に比べると即効性は少なく、薬としての効き目は緩やかだと勘違いされることが多いですが、実際は違います。
漢方薬でも、即効性があり、パワフルなものがあります。
特に動物性の生薬を使うと分単位で効果が出るものが多数あります。
風邪の引き始めで有名な葛根湯も効果は早いです。
風邪を引いた時に、葛根湯を服用した場合と、西洋薬(解熱剤など)を服用した場合を比較すると、葛根湯を服用した場合の方が早く治るという臨床データがあります。
参考)漢方に即効性はあるのか?
西洋医学のアプローチ
西洋医学の場合は、異常が現れている部位や症状に合わせてピンポイントで治療を行います。
一般的な病院には内科や外科、整形外科、耳鼻咽喉科、脳神経外科などさまざまな診療科が存在しますが、これらは西洋医学を基本として診察を行っています。
具体的な治療方法としては投薬や手術などが挙げられ、医療機関で処方されることの多い痛み止めや風邪薬、咳止め、湿布薬、塗り薬などは西洋薬に分類されます。
症状や状態によっては、漢方薬が処方されることもあります。
検査や診察そのものは西洋医学をベースに、科学的な根拠やエビデンスをもとに検査・診察が行われているのです。
西洋医学で用いられる治療法は、膨大な研究やデータをもとに安全性が証明されているため患者にとっても安心です。
また、西洋医学の研究は日進月歩であり、技術の発達とともにそれまで治療が困難とされてきた疾患にも対応できる場合があります。
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東洋医学と西洋医学それぞれが活躍する場面
東洋医学と西洋医学にはそれぞれ強みと弱みがあり、どちらが優れていると一概に断定できるものではありません。
どのような場面で東洋医学または西洋医学が活躍するのか、具体的な例を交えながらご紹介しましょう。
東洋医学の場合
東洋医学に向いているのは、原因不明の慢性的な体調不良に悩まされているケースです。
たとえば、人間ドックなどの検査を受けても特に異常が見つからないのに、冷え性や肩こり、倦怠感、食欲不振などに悩まされているという方も少なくありません。
これらは日々の生活習慣や、体質が原因となっていることがあります。
あるいは精神的な不安や不調によって自律神経のバランスが崩れ、その結果として体の不調に繋がっていることも考えられます。
東洋医学では、実際に病気を発症していないにも関わらず、なんとなく体の調子が悪い状態を「未病」といいます。
これを放置しておくと、大きな病気につながる危険性もあります。
そのため「原因は明確ではないものの慢性的に体の調子が悪い」あるいは「体質を改善し病気を予防したい」という場合に東洋医学の治療が役立ちます。
西洋医学の場合
西洋医学に向いているのは、具体的な疾患名とその原因がはっきりとしているケースです。
具体的には「インフルエンザなどの感染症を発症したとき」「検査によってガンが見つかったとき」
あるいは「骨折や打撲といった外傷を負った際」には、科学的な知見に基づきピンポイントで治療を行う必要があります。
たとえば、ガンが見つかった際には早急に腫瘍を取り除かなければ転移し、命を落とす危険もあることから、放射線治療や外科手術などを受けなければなりません。
また、大量の出血を伴う外傷を負った際にも、速やかに止血しなければ命の危険が伴うでしょう。
原因が明確で特定の部位に対するピンポイントでの治療が求められる場合や、緊急性が高く一刻の猶予もないという場合などに西洋医学の治療が役立ちます。
漢方と西洋薬を併用する場合の注意点
風邪のひきはじめのような症状が見られる場合や、胃腸の調子が悪いとき、頭痛や生理痛がひどいときなど、薬局で市販の薬を購入することも多いでしょう。
漢方薬は一般の薬局でも販売されており手軽に購入できるほか、西洋薬に比べて効き目が緩やかで副作用のリスクが少ないという特徴があります。
しかし、何らかの基礎疾患がある方は注意が必要です。
病院から処方された西洋薬を日常的に服用している場合、漢方薬を併用することで特定の成分が相互作用し、薬の吸収が阻害されることがあります。
また、薬の飲み合わせによっては副作用が現れる危険性もあることから、自分自身の判断で併用するのではなく、医師または薬剤師へ相談することが大切です。
東洋医学と西洋医学のどちらを選ぶべきか
先述の通り、東洋医学と西洋医学はそれぞれに特徴・強みがあり、どちらが優れているというものではありません。
ウイルスによる感染症など、明らかに原因が分かっている場合には西洋医学に基づく治療が向いているでしょう。
なんとなく体の調子が悪い状態が続き、検査を受けても異常が見つからない場合もあります。
その場合には、漢方専門医や漢方に詳しい薬剤師に相談してみるのもひとつの手かもしれません。
もし、近所に漢方専門薬局が見つからない、あるいは信頼できる薬剤師が分からない場合には、宮城県仙台市にある「運龍堂」へご相談ください。
運龍堂では冷え性や更年期障害、めまい、便秘などさまざまな症状に対応した漢方薬を取り揃えております。
そして、患者様の症状や体質を丁寧にヒアリングしたうえで、処方しています。
来店が難しい遠方の方でも手軽にご利用いただけるよう、無料のオンライン漢方相談も行っております。
薬剤師の顔を見ながら、身体のお悩みから心のお悩みまでじっくりと相談することができます。
相談内容に合わせて最適な漢方薬のご提案もさせていただき、そのままオンラインでオーダーすることも可能です。
関連記事:のどの痛み・乾燥・痰に効果のある漢方と効果が出るまでの期間について解説
まとめ
東洋医学は長い歴史の中で培われてきた伝統的な知見に基づき、心身のバランスを整えるという考え方が根本にあります。
これに対し、西洋医学では科学的な知見に基づき、異常が現れている部位や症状に直接的に介入するという違いがあります。
近代医療は西洋医学を中心とした研究が進んでいますが、原因がはっきりとしない心身の不調には東洋医学の知見が役立つことも少なくありません。
症状や状態に合わせて、自分に合った治療法や薬を医師または薬剤師へ相談してみましょう。
この記事の監修薬剤師
運龍堂 佐藤貴繁
略歴
1977年 北海道生まれ。北海道立札幌南高等学校
北海道大学薬学部を卒業
2003年 薬剤師免許を取得
2006年 北海道大学大学院薬学研究科生体分子薬学
専攻博士後期課程を終了後、博士(薬学)取得
2011年 福祉社会法人 緑仙会理事 就任
2012年 杜の都の漢方薬局 運龍堂 開局
2013年 宮城県自然薬研究会会長 就任
2017年 宮城県伝統生薬研究会会長 就任