夏に注意が必要なストレスの話
夏の溜まった疲れは自律神経の乱れ(気の巡りの悪さ)からきているかもしれません。そんなときにお勧めの漢方薬は麝香(じゃこう)含有の製剤です。ここではストレスと自律神経、麝香について解説していきます。
<ストレスの種類>
ストレスの原因にはいくつか種類があります。漢方では邪気とも呼ぶことができます。
物理的なもの(温度、音、光、放射線など)、化学的なもの(薬物、お酒、たばこ)、生物的なもの(炎症、感染)、心理的なもの(喜怒哀楽)などにわけることができます。
普段の仕事で感じる喜怒哀楽や、PC・スマホをいじる時間が長かったり、ストレスになるものはたくさんあります。
夏のストレスはそこへ寒暖差が加わります。ただでさえストレスが多い現代生活に加え、熱中症に注意が必要なほどの暑さ、上着が必要なほどキンキンに冷えた室内、この激しい寒暖差を交互を繰り返す生活では身体にかなりのストレスがかかります。また、体調面でいえば自分が倒れてしまうかもしれないという不安そのものもストレスになってしまいます。
<自律神経がストレスをコントロールする>
これらのストレスのコントロールには自律神経が関わっています。暑いときには意識しなくても汗が出て体温を下げようと働き、冷えた部屋では毛穴を閉じ血管も収縮させて過剰に体温が奪われないように調整します。またストレスに抵抗するためにホルモンの分泌なども自律神経によって行われます。
<自律神経を整える漢方薬:麝香(じゃこう)>
過剰なストレスがかかると自律神経によるストレスコントロールができなくなります。漢方ではこの状態を「気の巡り」が悪くなった状態と考えます。本来全身を過不足なく気が巡っていることで健康が保たれるからです。気の巡りを整える優れた生薬が「ジャコウ」です。これはジャコウジカの雄の嚢中の分泌物を乾燥させたものです。気の巡りを整える漢方薬はいくつかありますが、麝香は別格の効能をもっていて全身に張り巡らされた経絡(気の通り道)を開いて身体の隅々にまで一気に気を通します。
<ジャコウは命を養う薬>
ジャコウは「神農本草経(しんのうほんぞうきょう」において「上品(じょうほん」に分類されています。一言でいうと命を養う薬です。効能として「悪気を避けさせ、たたりなどを消し去るほか、人に悪い影響を及ぼす邪気を除いて、夢を見て跳び起きたり、あるいは寝ていて悪夢にうなされたりといったことがなくなる」とも紹介されています。ストレスが原因で夜中にはっと目が覚める、熟眠できないといった睡眠リズムの乱れを整えるはたらきをジャコウがもっていることを示しています。
この記事の監修薬剤師
運龍堂 佐藤貴繁
略歴
1977年 北海道生まれ。北海道立札幌南高等学校
北海道大学薬学部を卒業
2003年 薬剤師免許を取得
2006年 北海道大学大学院薬学研究科生体分子薬学
専攻博士後期課程を終了後、博士(薬学)取得
2011年 福祉社会法人 緑仙会理事 就任
2012年 杜の都の漢方薬局 運龍堂 開局
2013年 宮城県自然薬研究会会長 就任
2017年 宮城県伝統生薬研究会会長 就任