投稿日:2019.04.18/更新日:2023.11.15

弟切草(オトギリソウ)|鎮痛で有名な民間薬

弟切草(オトギリソウ)の効能・効果

弟切草(オトギリソウ)は「小連翹(ショウレンギョウ)」という生薬名ですが、漢方処方ではあまり用いられず、主に民間薬として使われてきました。煎じ液は止血、月経不順、鎮痛の目的で服用され、入浴剤としてはリウマチ、神経痛、痛風の鎮痛に用いられています。また、薬酒でリウマチ、神経痛の予防に、煎汁を扁桃腺炎のうがい薬や湿布として用いるなど、多くの用途が知られています。

弟切草茶の飲み方

5gを500~1000mLの水で煎じます。沸騰したら弱火で5分間煎じ、残りかすを取り除いたらその日のうちに飲み切ります。民間療法として弟切草5gに対して炙甘草を1gほど一緒に加えて煎じる飲み方もおすすめです。

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研究報告からみる弟切草

民間療法では飲む、塗る、入浴剤でも「痛み」などに用いられてきた特徴がありますが、別の応用方法が期待できる研究報告もあります。高齢社会で多い、誤嚥性肺炎の予防や歯周病の対策として弟切草茶は効果が期待できます(*1)。また、食事の際にお茶にして飲むことで食事による血糖値の上昇が抑えられる効果も期待できます(*2)。

名前の由来

弟切草(オトギリソウ)は北海道以外の日本各地に生える多年草で、草丈は30~60cmほどになり、葉は長楕円形、下面から透かすと黒色の小さい点が見られるのが特徴です。葉っぱの付き方は必ず対になって2枚ずつという特徴もあります。「弟切草(オトギリソウ)」の由来はある鷹匠(たかじょう)の兄弟の物語に由来しています。この家では弟切草は鷹の傷の特効薬として家伝の秘密になっていました。弟は別の鷹匠の家の娘に恋をしており、この家伝の秘密をその娘に洩らしてしまったそうです。そのことに激怒した兄が弟を切り捨てたという伝説から「弟切草(オトギリソウ)」とつけられています。この話は江戸時代の百科事典「和漢三才図会(わかんさんさいずえ)」に記載されています。

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セイヨウオトギリソウとの違い

混同されやすい素材として、セイヨウオトギリソウ (Hypericum perforatum, 別名セントジョーンズワート) があります。これも弟切草(オトギリソウ)と同様に切り傷ややけど、神経痛などに使用されていますが弟切草(オトギリソウ)とは異なる植物です。弟切草とセイヨウオトギリソウが混同されやすい背景として含有成分の類似が挙げられます。両者はともにキサントフィル、タンニン、フラボノイド類を含んでいます。これらの成分から止血、鎮痛、抗ウイルス、抗腫瘍の効果があることが明らかになっています。

医薬品との飲み合わせについて

弟切草と医薬品の飲み合わせの問題は詳しい文献で報告されておりません。一方、類似の健康ハーブであるセイヨウオトギリソウでは使用規模などから研究も盛んにおこなわれており飲み合わせの注意が数多く報告されています。報告はないにしても、弟切草においても抗HIV剤、強心剤、免疫抑制剤、ワーファリンとの併用は避ける方が安全であると考えられます。

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*1誤嚥性肺炎の予防に弟切草茶が効果的という論文

Showa Univ J Med Sci 26(4), 283~291, December 2014
Antibacterial Activity of Hypericum Erectum

弟切草5gを500mLのお湯で5分煎じるとヒペリシンもカフェインも検出されないとのことです。ヒペリシンは光増感色素であり、光線過敏による皮膚炎の原因になる成分です。弟切草の熱湯による抽出液は特に口腔内の連鎖球菌に対する殺菌効果が高いとのデータがあり、誤嚥性肺炎の原因菌として知られているS. oralis(ミティスレンサ球菌群)とS. aureus(黄色ブドウ球菌) にも弟切草は有効とのことです。(ジンジバリス菌) ポルフィロモナス・ジンジバリス やアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンスといった歯周組織の病原性細菌にも効果があると報告されています。これらのことから弟切草を飲むことで、誤嚥性肺炎(食物や胃内容物の吸引が原因となって起こる肺炎) だけにとどまらず歯周病の予防にも役立つと考えられます。

*2おとぎり草茶のヒト食後血糖上昇抑制作用と抗酸化能

日本家政学会誌 Vol. 60 No. 7 673~680 (2009)

飲料水 (ミネラルウォーター) とおとぎり草茶をクロスオーバーで摂取してもらったときの食後血糖値の変化を比較した報告になります。被験者には試験当日朝7時以降の水以外の飲食を禁止してもらい、11 時 30 分に米飯摂取前の空腹時血糖値を測定したものになります。その後、レトルト米飯 200g とふりかけ2.5gを飲料水または弟切草茶200 mlとともに15分間で摂取してもらい、食後30,60,120 分に血糖値を測定したデータになります。
弟切草2gを100mLで80度のお湯で30分攪拌しながら煎じた抽出液のマルターゼ阻害活性は、グルコース産生率が30 分、60分、90分と全てにおいて、弟切草茶添加が有意に低くなり、弟切草茶添加によるマルターゼ阻害が認められたそうです。血糖値の上がりやすい被験者において、弟切草茶の飲用により、主にマルターゼの二糖類から単糖類への変換が阻害され、単糖類の吸収が遅延・抑制したことで、血糖値の上昇が有意に抑制されたと推察されます。血糖値が上がりやすい健常者では、上がりにくい健常者に比較して、現状においてもインスリンを多く必要とすることが推測されるため、食後に分泌されるインスリンの分泌を抑制するためにも、食事とともに弟切草茶のような血糖上昇を抑制する飲料を摂取することは非常に意義があると考えられます。

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この記事の監修薬剤師

運龍堂 佐藤貴繁

略歴

1977年 北海道生まれ。北海道立札幌南高等学校
     北海道大学薬学部を卒業
2003年 薬剤師免許を取得
2006年 北海道大学大学院薬学研究科生体分子薬学
     専攻博士後期課程を終了後、博士(薬学)取得
2011年 福祉社会法人 緑仙会理事 就任
2012年 杜の都の漢方薬局 運龍堂 開局
2013年 宮城県自然薬研究会会長 就任
2017年 宮城県伝統生薬研究会会長 就任

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2019/04/18

弟切草(オトギリソウ)|鎮痛で有名な民間薬

弟切草(オトギリソウ)の効能・効果

弟切草(オトギリソウ)は「小連翹(ショウレンギョウ)」という生薬名ですが、漢方処方ではあまり用いられず、主に民間薬として使われてきました。煎じ液は止血、月経不順、鎮痛の目的で服用され、入浴剤としてはリウマチ、神経痛、痛風の鎮痛に用いられています。また、薬酒でリウマチ、神経痛の予防に、煎汁を扁桃腺炎のうがい薬や湿布として用いるなど、多くの用途が知られています。

弟切草茶の飲み方

5gを500~1000mLの水で煎じます。沸騰したら弱火で5分間煎じ、残りかすを取り除いたらその日のうちに飲み切ります。民間療法として弟切草5gに対して炙甘草を1gほど一緒に加えて煎じる飲み方もおすすめです。

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研究報告からみる弟切草

民間療法では飲む、塗る、入浴剤でも「痛み」などに用いられてきた特徴がありますが、別の応用方法が期待できる研究報告もあります。高齢社会で多い、誤嚥性肺炎の予防や歯周病の対策として弟切草茶は効果が期待できます(*1)。また、食事の際にお茶にして飲むことで食事による血糖値の上昇が抑えられる効果も期待できます(*2)。

名前の由来

弟切草(オトギリソウ)は北海道以外の日本各地に生える多年草で、草丈は30~60cmほどになり、葉は長楕円形、下面から透かすと黒色の小さい点が見られるのが特徴です。葉っぱの付き方は必ず対になって2枚ずつという特徴もあります。「弟切草(オトギリソウ)」の由来はある鷹匠(たかじょう)の兄弟の物語に由来しています。この家では弟切草は鷹の傷の特効薬として家伝の秘密になっていました。弟は別の鷹匠の家の娘に恋をしており、この家伝の秘密をその娘に洩らしてしまったそうです。そのことに激怒した兄が弟を切り捨てたという伝説から「弟切草(オトギリソウ)」とつけられています。この話は江戸時代の百科事典「和漢三才図会(わかんさんさいずえ)」に記載されています。

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セイヨウオトギリソウとの違い

混同されやすい素材として、セイヨウオトギリソウ (Hypericum perforatum, 別名セントジョーンズワート) があります。これも弟切草(オトギリソウ)と同様に切り傷ややけど、神経痛などに使用されていますが弟切草(オトギリソウ)とは異なる植物です。弟切草とセイヨウオトギリソウが混同されやすい背景として含有成分の類似が挙げられます。両者はともにキサントフィル、タンニン、フラボノイド類を含んでいます。これらの成分から止血、鎮痛、抗ウイルス、抗腫瘍の効果があることが明らかになっています。

医薬品との飲み合わせについて

弟切草と医薬品の飲み合わせの問題は詳しい文献で報告されておりません。一方、類似の健康ハーブであるセイヨウオトギリソウでは使用規模などから研究も盛んにおこなわれており飲み合わせの注意が数多く報告されています。報告はないにしても、弟切草においても抗HIV剤、強心剤、免疫抑制剤、ワーファリンとの併用は避ける方が安全であると考えられます。

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*1誤嚥性肺炎の予防に弟切草茶が効果的という論文

Showa Univ J Med Sci 26(4), 283~291, December 2014
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弟切草5gを500mLのお湯で5分煎じるとヒペリシンもカフェインも検出されないとのことです。ヒペリシンは光増感色素であり、光線過敏による皮膚炎の原因になる成分です。弟切草の熱湯による抽出液は特に口腔内の連鎖球菌に対する殺菌効果が高いとのデータがあり、誤嚥性肺炎の原因菌として知られているS. oralis(ミティスレンサ球菌群)とS. aureus(黄色ブドウ球菌) にも弟切草は有効とのことです。(ジンジバリス菌) ポルフィロモナス・ジンジバリス やアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンスといった歯周組織の病原性細菌にも効果があると報告されています。これらのことから弟切草を飲むことで、誤嚥性肺炎(食物や胃内容物の吸引が原因となって起こる肺炎) だけにとどまらず歯周病の予防にも役立つと考えられます。

*2おとぎり草茶のヒト食後血糖上昇抑制作用と抗酸化能

日本家政学会誌 Vol. 60 No. 7 673~680 (2009)

飲料水 (ミネラルウォーター) とおとぎり草茶をクロスオーバーで摂取してもらったときの食後血糖値の変化を比較した報告になります。被験者には試験当日朝7時以降の水以外の飲食を禁止してもらい、11 時 30 分に米飯摂取前の空腹時血糖値を測定したものになります。その後、レトルト米飯 200g とふりかけ2.5gを飲料水または弟切草茶200 mlとともに15分間で摂取してもらい、食後30,60,120 分に血糖値を測定したデータになります。
弟切草2gを100mLで80度のお湯で30分攪拌しながら煎じた抽出液のマルターゼ阻害活性は、グルコース産生率が30 分、60分、90分と全てにおいて、弟切草茶添加が有意に低くなり、弟切草茶添加によるマルターゼ阻害が認められたそうです。血糖値の上がりやすい被験者において、弟切草茶の飲用により、主にマルターゼの二糖類から単糖類への変換が阻害され、単糖類の吸収が遅延・抑制したことで、血糖値の上昇が有意に抑制されたと推察されます。血糖値が上がりやすい健常者では、上がりにくい健常者に比較して、現状においてもインスリンを多く必要とすることが推測されるため、食後に分泌されるインスリンの分泌を抑制するためにも、食事とともに弟切草茶のような血糖上昇を抑制する飲料を摂取することは非常に意義があると考えられます。

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この記事の監修薬剤師

運龍堂 佐藤貴繁

略歴

1977年 北海道生まれ。北海道立札幌南高等学校
     北海道大学薬学部を卒業
2003年 薬剤師免許を取得
2006年 北海道大学大学院薬学研究科生体分子薬学
     専攻博士後期課程を終了後、博士(薬学)取得
2011年 福祉社会法人 緑仙会理事 就任
2012年 杜の都の漢方薬局 運龍堂 開局
2013年 宮城県自然薬研究会会長 就任
2017年 宮城県伝統生薬研究会会長 就任

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