2019年8月9日 みやぎ酪農協会の研修会で漢方勉強会を行いました。
テーマは「聞いて驚く漢方の基本と動物性生薬の魅力」です。
参加者は中高年の男性が多かったため高血圧の根本的な対策である血流改善や男性の更年期についてもお話しました。
・漢方は日本独自の言葉であり、日本の伝統医療
・皮膚蒸泄(ひふじょうせつ)と病(やまい)の関係
・毛細血管は全身の血管の99%以上であることと、その巡りについて
・鹿茸(ろくじょう)と更年期について
<漢方は日本独自の言葉であり、日本の伝統医療>
漢方は「中国のもの」と勘違いをしている方も多いのですが、実は日本の気候風土に合わせて日本で独自に発展してきたものです。
<皮膚蒸泄(ひふじょうせつ)と病(やまい)の関係>
身体で常時発生する代謝熱を私たちは皮膚から水蒸気を使って排熱しています。これが障害されると熱の循環が悪くなり病になります。これを回復させるのが実は葛根湯であり、葛根湯は単なる風邪薬ではなく発汗剤です。この理由から熱の循環が悪くなったことで起こるあらゆる症状に葛根湯が使えます。
<毛細血管は全身の血管の99%以上であることと、その巡りについて>
私たちの血液は赤い色をしています。これは酸素を運ぶ赤血球が赤色だからです。赤血球は全身の細胞に酸素を届けるために全身に張り巡らされた毛細血管を血液と一緒に流れています。赤血球は毛細血管を流れるときには柔軟に変形しながら流れています。
残念ながらこの変形能は加齢とともに悪くなってしまいます。さらに加齢によって血管自体も柔軟性を失っていくため、これらが血液の巡りを悪くしてしまいます。高血圧になる理由も血液循環の悪さから脳血流が悪くならないように血圧の勢いを高めている状態です。つまり、必要で血圧をあげている場合、根本的な部分を改善せずに血圧を下げることはリスクも伴うことになります。単に血圧の数値を下げることを目的とするのではなく、悪くなっている血液循環を改善して血圧コントロールを目指しましょう。
<鹿茸(ろくじょう)と更年期について>
鹿茸は「腎」を補う代表処方です。腎は生命力を主るため、腎を強化することはアンチエイジングになります。また、腎の衰え、不調から生じるものに更年期障害があります。これにも鹿茸が治療として優れていますし、体調が良くなった後でも健康維持増進として使い続けることができます。
漢方は長く飲まないと効かないと思っている方も多いですが、動物性生薬は即効性でパワフルという特徴があります。結果をすぐに求めてしまう現代人には動物性生薬は漢方のイメージを覆し、生活に取り入れたくなる魅力がたくさんあります。
よく用いられる動物性生薬には牛黄(ごおう)、麝香(じゃこう)、鹿茸(ろくじょう)があります。
牛黄は肉体疲労に著効し、麝香は精神疲労に著効します。鹿茸はこの中でも守りの処方と言われており、基礎体力アップを目的とすることが多いです。鹿茸は長期的に使うことでさらに良さが引き出されていきます。
この記事の監修薬剤師
運龍堂 佐藤貴繁
略歴
1977年 北海道生まれ。北海道立札幌南高等学校
北海道大学薬学部を卒業
2003年 薬剤師免許を取得
2006年 北海道大学大学院薬学研究科生体分子薬学
専攻博士後期課程を終了後、博士(薬学)取得
2011年 福祉社会法人 緑仙会理事 就任
2012年 杜の都の漢方薬局 運龍堂 開局
2013年 宮城県自然薬研究会会長 就任
2017年 宮城県伝統生薬研究会会長 就任