投稿日:2022.07.22/更新日:2023.02.15

漢方で癌を治す役割について|予防の機能や免疫についても紹介

東洋医学には鍼灸やあん摩、マッサージ、薬膳などの療法がありますが、これらに加えて代表的な療法として挙げられるのが漢方です。

さまざまな病気やケガに対応し、人間の身体のバランスを整える効果があるとされています。

では、日本において多くの患者がいる癌という病気に対して、漢方は有効なのでしょうか。

現代の癌治療ではどのような方法がとられているのかを紹介するとともに、癌治療と漢方の関係性および役割、処方されることの多い漢方薬の一例も含めて詳しく解説しましょう。

漢方|癌(がん)治療の現状

そもそも癌とは、私たちの身体にある細胞が遺伝子の変異によって腫瘍に変化し、体内で増殖していく病気のことを指します。

 

正常な細胞は遺伝子の情報をもとに分裂し増殖していきますが、何らかの理由によって変異を起こすと悪性の腫瘍となり体内を蝕んでいくことがあります。

 

これが癌という病気であり、癌を治療するためには腫瘍の増殖や転移を抑える必要があります。

 

国立がん研究センターの統計調査によると、生涯で何らかの癌になる確率は男性で65%、女性で50%といわれており、誰がかかってもおかしくない身近な病気といえるのです。

 

では、腫瘍の増殖・転移を抑えるためには、どのような治療方法があるのでしょうか。

現在、癌の治療方法として確立されているのは「手術療法」と「放射線療法」、「化学療法」、そして「免疫療法」の4つがあり、癌の進行状況や転移、腫瘍の場所などによって適切な治療法が選択されます。

 

手術療法

 

手術療法とはその名の通り、物理的に腫瘍を切除する治療法です。

手術と聞くとメスを入れて大きな傷ができるのではないかと心配する方も多いですが、最近では腹腔鏡下手術や胸腔鏡下手術など、小さな傷口で済むような術式もあります。

 

また、傷口が大きければ大きいほど身体への負担も大きく退院まで時間を要しますが、上記の方法であれば比較的負担も軽く、入院期間も短くて済みます。

 

ただし、すべての癌において手術療法が適用できるとは限らず、腫瘍の大きさや場所、転移の状況などによっては難しいケースも少なくありません。

 

放射線療法

 

放射線療法とは、放射線を癌細胞に照射することで細胞分裂を抑制し、腫瘍の拡大と転移を抑える治療法です。

 

放射線は分裂と増殖を活発に行う細胞に対して効果を発揮するため、進行中の癌に対して有効な治療法です。

 

ただし、癌の進行状況によっては放射線を照射しても治療効果が得られないケースもあります。

 

化学療法

 

化学療法とは、主に抗がん剤を投与し腫瘍の拡大と転移を抑える治療法です。

 

腫瘍が一定の場所のみに発生している場合には、手術療法や放射線療法が有効ですが、全身に転移していると難しい場合があります。

 

化学療法であれば、投薬によって抗がん剤の成分を体内に循環させることができるため、複数か所に転移した癌に対しても効果が期待できます。

 

免疫療法

 

免疫療法は比較的新しい癌の治療法であり、私たちの体内に備わっている免疫力を高め、癌細胞を排除するというものです。

 

具体的には、免疫力を高める薬を投与しながら治療を行うため、化学療法と似ていますが、治療できる癌の種類は限られています。

 

漢方薬で癌治療できるのか?

 

上記で紹介した手術療法や放射線療法、化学療法、免疫療法などは、一般的に西洋医学に分類されます。

これに対し、中国をはじめとしてアジア圏で古くから用いられてきた東洋医学というものもあります。

 

東洋医学のなかでも特に代表的な漢方は、その人の体質や病気・ケガなどの症状に合わせて自然由来の生薬を処方するというものです。

 

漢方は特定の部位の病気やケガを治すというよりも、人間の身体のバランスを整えるというアプローチをするのが特徴です。

 

食生活をはじめとした生活習慣を見直し、重篤な病気にかかるのを防ぐという意味でも漢方による治療は有効といえるでしょう。

 

しかし、癌という特定の病気を治療する場合には、漢方のみで治すことは難しいケースが多いと考えられます。

 

癌を直接的に治療するためには腫瘍を取り除く必要があり、その手段としては上記で紹介した西洋医学でのアプローチが有効である場合がほとんどです。

 

一方で、癌治療の現場で漢方が一切活用されていないかといえば、決してそのようなことはありません。

 

手術療法や放射線療法など、癌治療はいずれも患者にとって辛いものであり、食欲不振や激しい倦怠感、気分の落ち込みなどの症状が現れることがあります。

 

食欲がなくなると十分な栄養を補給できなくなり、患者の免疫力はどんどん低下していくでしょう。

 

また、「病は気から」という言葉もあるように、気分の落ち込みも免疫力の低下に拍車をかけることになります。

 

私たち人間が本来もっている免疫力が低下すれば、癌の進行も早くなり容態が急激に悪化する危険もあるのです。

 

そこで、このような治療における副次的な症状を緩和するために、漢方薬が処方されるケースは珍しくないのです。

円滑な癌治療を進めるためにも、漢方薬の処方は重要な役割を果たします。

 

漢方とがん治療のエビデンス

 

近年の研究で、がんと漢方に関する様々なデータがあつまってきており、下記の内容について、論文が多く、報告されています。

 

・治療や予防を目的とする:免疫力の調整

・化学療法の副作用を軽減する

・放射線治療の副作用を軽減する

・外科的手術からの回復を早める

・緩和ケア(生活の質をあげる)

 

このように色々なケースで漢方は活用出来ますが、一方で素人判断は危険です。ぜひ漢方の専門家に相談してみてください。

 

漢方薬は癌の予防も期待できる

 

手術や放射線療法といった西洋医学は、医師の適切な診断を受けて初めて専門医による治療を受けることができます。

 

しかし、反対に考えれば、病気にならないと治療を受けることはできないことも意味します。

 

これに対し東洋医学は、大きな病気にかかる前に予防をするという意味でも用いられることがあります。

 

たとえば、「なんとなく身体がだるい」、「原因不明の頭痛や肩こりの症状が現れる」、「慢性的な冷え性に悩まされている」といったように、正式な病名が診断されていない「未病」に対して漢方は有効に作用します。

 

癌という病気は、発症する部位によって症状の現れ方が異なり、痛みや違和感がないまま進行するケースも少なくありません。

 

少しでも身体の不調が現れたときはもちろんですが、そうでないときも日常的に漢方を取り入れておけば、つねにベストな体調を維持でき、癌の予防にも一定の効果が期待できると考えられます。

 

また、免疫改善に関する効果が認められている漢方薬や生薬が多数知られています。

 

例えば、最も有名な朝鮮人参に関するデータがあります。

 

韓国の疫学調査で朝鮮人参非摂取グループの発癌リスクを1とした場合、朝鮮人参を摂取したグループの胃癌になるリスクは0.33で、肺癌になるリスクは0.30と減少するという報告もあります。そのほかにも、様々な報告があります。

 

ただし、漢方薬を飲んでいるからといって癌が100%予防できるとも限らないため、定期的な検診は受診も大切です。

 

漢方薬|癌治療の現場にも活用

 

癌治療の現場では、さまざまな症状にあわせて漢方薬が処方されていると説明しましたが、具体的にどのような薬が処方されているのでしょうか。

 

それぞれの漢方薬に対応した症状もあわせて詳しく紹介しましょう。

 

四君子湯・六君子湯(しくんしとう)・(りっくんしとう)

 

食欲不振や嘔吐、下痢、慢性的な胃炎や消化器系の不調に対して処方されることが多いのが、四君子湯(しくんしとう)や六君子湯(りっくんしとう)です。

 

主な成分としては、人参や生姜、甘草(かんぞう)、蒼朮(そうじゅつ)などの生薬が配合されています。

 

人参養栄湯(にんじんようえいとう)

 

四君子湯と同様に食欲不振に効果がありますが、それに加えて咳(せき)や痰(たん)などの症状を緩和するために処方されるのが人参養栄湯(にんじんようえいとう)です。

 

癌治療において体力や免疫力が低下しているときに、咳や痰などが悪化すると肺炎などの合併症を引き起こすリスクも高いことから、呼吸器系の症状に対応する有効な漢方薬といえます。

 

小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)

 

吐き気や嘔吐が繰り返される場合に処方されるのが小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)です。

 

半夏(はんげ)や茯苓(ぶくりょう)、生姜などの生薬が配合されており、特に胃のなかに水が溜まっている状態や、胃腸炎にも効果を発揮します。

 

加味逍遥散(かみしょうようさん)

 

癌治療は進行度合いや治療内容、入院期間によっても患者にかかる負担は異なりますが、症状が重篤化すればするほど辛さは増してきます。

 

体力的な辛さはもちろんですが、「いつ治療が終わるのか」、「そもそも完治するのか」といった不安を抱き、精神的に追い詰められる患者も少なくありません。

 

そのような精神的な不安に対して有効なのが加味逍遥散(かみしょうようさん)です。

 

ストレス性の不眠や頭痛、発汗、めまいなどの症状にも有効な漢方薬です。

 

ただし、加味逍遙散は、薄荷が入っており、皮膚を冷やしてしまいます。

 

そのため、長期間の使用には注意が必要です。

 

 

他にも補中益気湯や十全大補湯など放射線治療に併用した処方など多数の診療方法があります。

詳しくは、運龍堂までお気軽にご相談下さい。

 

癌の漢方薬治療の費用

 

漢方薬には西洋薬のように強力に腫瘍そのものを除去したり、転移を防いだりする効果は少ないものの、食欲不振やストレスの緩和などには優れた効果が期待できることが分かりました。

 

癌治療を円滑にすすめるうえでも漢方薬は有効な存在といえるでしょう。

 

しかし、癌治療に多額の費用がかかるなかで、さらに漢方薬まで処方されるとなるとコスト面での不安が頭をよぎる方も多いのではないでしょうか。

 

まず、大前提として漢方薬にもさまざまな種類があり、一概にどの程度のコストがかかるのかを断言することはできません。

 

症状によっては2種類、3種類の漢方薬が処方されることも考えられ、その分費用も高くなるでしょう。

 

ただし、多くの漢方薬は薬局などでも販売されており、決して高価なものではありません。

 

1週間あたり500円〜数千円以下で済む場合もあります。

 

そのため、漢方薬を取り入れたからといって大幅に治療費や入院費が上がる心配は少ないでしょう。

 

漢方薬|癌治療の現場で欠かせない

 

今回紹介してきたように、漢方薬単独では腫瘍を取り除く効果は少なく、直接的な治療に用いるケースは少ないです。

 

しかし、だからといって手術療法や放射線療法、化学療法だけでは患者の免疫力が低下することもあり、せっかく腫瘍を切除しても免疫力が低下し病状が悪化することもあるのです。

 

そこで、漢方薬を上手に取り入れることで、食欲不振やストレスの緩和といった副次的な症状を緩和でき、免疫力を高めながら回復をサポートすることができます。

 

癌治療の現場において、漢方薬は欠かせない重要な存在であるともいえるのです。

 

 

その他の記事では、流行りのコロナウイルスや感染症、ペットにも服用できる漢方医療に関することなど様々な記事を掲載しています。

 

漢方に関して不安やお悩みの事がございましたらお気軽に運龍堂までご相談下さい。

 

この記事の監修薬剤師

運龍堂 佐藤貴繁

略歴

1977年 北海道生まれ。北海道立札幌南高等学校
     北海道大学薬学部を卒業
2003年 薬剤師免許を取得
2006年 北海道大学大学院薬学研究科生体分子薬学
     専攻博士後期課程を終了後、博士(薬学)取得
2011年 福祉社会法人 緑仙会理事 就任
2012年 杜の都の漢方薬局 運龍堂 開局
2013年 宮城県自然薬研究会会長 就任
2017年 宮城県伝統生薬研究会会長 就任

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2022/07/22

漢方で癌を治す役割について|予防の機能や免疫についても紹介

東洋医学には鍼灸やあん摩、マッサージ、薬膳などの療法がありますが、これらに加えて代表的な療法として挙げられるのが漢方です。

さまざまな病気やケガに対応し、人間の身体のバランスを整える効果があるとされています。

では、日本において多くの患者がいる癌という病気に対して、漢方は有効なのでしょうか。

現代の癌治療ではどのような方法がとられているのかを紹介するとともに、癌治療と漢方の関係性および役割、処方されることの多い漢方薬の一例も含めて詳しく解説しましょう。

漢方|癌(がん)治療の現状

そもそも癌とは、私たちの身体にある細胞が遺伝子の変異によって腫瘍に変化し、体内で増殖していく病気のことを指します。

 

正常な細胞は遺伝子の情報をもとに分裂し増殖していきますが、何らかの理由によって変異を起こすと悪性の腫瘍となり体内を蝕んでいくことがあります。

 

これが癌という病気であり、癌を治療するためには腫瘍の増殖や転移を抑える必要があります。

 

国立がん研究センターの統計調査によると、生涯で何らかの癌になる確率は男性で65%、女性で50%といわれており、誰がかかってもおかしくない身近な病気といえるのです。

 

では、腫瘍の増殖・転移を抑えるためには、どのような治療方法があるのでしょうか。

現在、癌の治療方法として確立されているのは「手術療法」と「放射線療法」、「化学療法」、そして「免疫療法」の4つがあり、癌の進行状況や転移、腫瘍の場所などによって適切な治療法が選択されます。

 

手術療法

 

手術療法とはその名の通り、物理的に腫瘍を切除する治療法です。

手術と聞くとメスを入れて大きな傷ができるのではないかと心配する方も多いですが、最近では腹腔鏡下手術や胸腔鏡下手術など、小さな傷口で済むような術式もあります。

 

また、傷口が大きければ大きいほど身体への負担も大きく退院まで時間を要しますが、上記の方法であれば比較的負担も軽く、入院期間も短くて済みます。

 

ただし、すべての癌において手術療法が適用できるとは限らず、腫瘍の大きさや場所、転移の状況などによっては難しいケースも少なくありません。

 

放射線療法

 

放射線療法とは、放射線を癌細胞に照射することで細胞分裂を抑制し、腫瘍の拡大と転移を抑える治療法です。

 

放射線は分裂と増殖を活発に行う細胞に対して効果を発揮するため、進行中の癌に対して有効な治療法です。

 

ただし、癌の進行状況によっては放射線を照射しても治療効果が得られないケースもあります。

 

化学療法

 

化学療法とは、主に抗がん剤を投与し腫瘍の拡大と転移を抑える治療法です。

 

腫瘍が一定の場所のみに発生している場合には、手術療法や放射線療法が有効ですが、全身に転移していると難しい場合があります。

 

化学療法であれば、投薬によって抗がん剤の成分を体内に循環させることができるため、複数か所に転移した癌に対しても効果が期待できます。

 

免疫療法

 

免疫療法は比較的新しい癌の治療法であり、私たちの体内に備わっている免疫力を高め、癌細胞を排除するというものです。

 

具体的には、免疫力を高める薬を投与しながら治療を行うため、化学療法と似ていますが、治療できる癌の種類は限られています。

 

漢方薬で癌治療できるのか?

 

上記で紹介した手術療法や放射線療法、化学療法、免疫療法などは、一般的に西洋医学に分類されます。

これに対し、中国をはじめとしてアジア圏で古くから用いられてきた東洋医学というものもあります。

 

東洋医学のなかでも特に代表的な漢方は、その人の体質や病気・ケガなどの症状に合わせて自然由来の生薬を処方するというものです。

 

漢方は特定の部位の病気やケガを治すというよりも、人間の身体のバランスを整えるというアプローチをするのが特徴です。

 

食生活をはじめとした生活習慣を見直し、重篤な病気にかかるのを防ぐという意味でも漢方による治療は有効といえるでしょう。

 

しかし、癌という特定の病気を治療する場合には、漢方のみで治すことは難しいケースが多いと考えられます。

 

癌を直接的に治療するためには腫瘍を取り除く必要があり、その手段としては上記で紹介した西洋医学でのアプローチが有効である場合がほとんどです。

 

一方で、癌治療の現場で漢方が一切活用されていないかといえば、決してそのようなことはありません。

 

手術療法や放射線療法など、癌治療はいずれも患者にとって辛いものであり、食欲不振や激しい倦怠感、気分の落ち込みなどの症状が現れることがあります。

 

食欲がなくなると十分な栄養を補給できなくなり、患者の免疫力はどんどん低下していくでしょう。

 

また、「病は気から」という言葉もあるように、気分の落ち込みも免疫力の低下に拍車をかけることになります。

 

私たち人間が本来もっている免疫力が低下すれば、癌の進行も早くなり容態が急激に悪化する危険もあるのです。

 

そこで、このような治療における副次的な症状を緩和するために、漢方薬が処方されるケースは珍しくないのです。

円滑な癌治療を進めるためにも、漢方薬の処方は重要な役割を果たします。

 

漢方とがん治療のエビデンス

 

近年の研究で、がんと漢方に関する様々なデータがあつまってきており、下記の内容について、論文が多く、報告されています。

 

・治療や予防を目的とする:免疫力の調整

・化学療法の副作用を軽減する

・放射線治療の副作用を軽減する

・外科的手術からの回復を早める

・緩和ケア(生活の質をあげる)

 

このように色々なケースで漢方は活用出来ますが、一方で素人判断は危険です。ぜひ漢方の専門家に相談してみてください。

 

漢方薬は癌の予防も期待できる

 

手術や放射線療法といった西洋医学は、医師の適切な診断を受けて初めて専門医による治療を受けることができます。

 

しかし、反対に考えれば、病気にならないと治療を受けることはできないことも意味します。

 

これに対し東洋医学は、大きな病気にかかる前に予防をするという意味でも用いられることがあります。

 

たとえば、「なんとなく身体がだるい」、「原因不明の頭痛や肩こりの症状が現れる」、「慢性的な冷え性に悩まされている」といったように、正式な病名が診断されていない「未病」に対して漢方は有効に作用します。

 

癌という病気は、発症する部位によって症状の現れ方が異なり、痛みや違和感がないまま進行するケースも少なくありません。

 

少しでも身体の不調が現れたときはもちろんですが、そうでないときも日常的に漢方を取り入れておけば、つねにベストな体調を維持でき、癌の予防にも一定の効果が期待できると考えられます。

 

また、免疫改善に関する効果が認められている漢方薬や生薬が多数知られています。

 

例えば、最も有名な朝鮮人参に関するデータがあります。

 

韓国の疫学調査で朝鮮人参非摂取グループの発癌リスクを1とした場合、朝鮮人参を摂取したグループの胃癌になるリスクは0.33で、肺癌になるリスクは0.30と減少するという報告もあります。そのほかにも、様々な報告があります。

 

ただし、漢方薬を飲んでいるからといって癌が100%予防できるとも限らないため、定期的な検診は受診も大切です。

 

漢方薬|癌治療の現場にも活用

 

癌治療の現場では、さまざまな症状にあわせて漢方薬が処方されていると説明しましたが、具体的にどのような薬が処方されているのでしょうか。

 

それぞれの漢方薬に対応した症状もあわせて詳しく紹介しましょう。

 

四君子湯・六君子湯(しくんしとう)・(りっくんしとう)

 

食欲不振や嘔吐、下痢、慢性的な胃炎や消化器系の不調に対して処方されることが多いのが、四君子湯(しくんしとう)や六君子湯(りっくんしとう)です。

 

主な成分としては、人参や生姜、甘草(かんぞう)、蒼朮(そうじゅつ)などの生薬が配合されています。

 

人参養栄湯(にんじんようえいとう)

 

四君子湯と同様に食欲不振に効果がありますが、それに加えて咳(せき)や痰(たん)などの症状を緩和するために処方されるのが人参養栄湯(にんじんようえいとう)です。

 

癌治療において体力や免疫力が低下しているときに、咳や痰などが悪化すると肺炎などの合併症を引き起こすリスクも高いことから、呼吸器系の症状に対応する有効な漢方薬といえます。

 

小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)

 

吐き気や嘔吐が繰り返される場合に処方されるのが小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)です。

 

半夏(はんげ)や茯苓(ぶくりょう)、生姜などの生薬が配合されており、特に胃のなかに水が溜まっている状態や、胃腸炎にも効果を発揮します。

 

加味逍遥散(かみしょうようさん)

 

癌治療は進行度合いや治療内容、入院期間によっても患者にかかる負担は異なりますが、症状が重篤化すればするほど辛さは増してきます。

 

体力的な辛さはもちろんですが、「いつ治療が終わるのか」、「そもそも完治するのか」といった不安を抱き、精神的に追い詰められる患者も少なくありません。

 

そのような精神的な不安に対して有効なのが加味逍遥散(かみしょうようさん)です。

 

ストレス性の不眠や頭痛、発汗、めまいなどの症状にも有効な漢方薬です。

 

ただし、加味逍遙散は、薄荷が入っており、皮膚を冷やしてしまいます。

 

そのため、長期間の使用には注意が必要です。

 

 

他にも補中益気湯や十全大補湯など放射線治療に併用した処方など多数の診療方法があります。

詳しくは、運龍堂までお気軽にご相談下さい。

 

癌の漢方薬治療の費用

 

漢方薬には西洋薬のように強力に腫瘍そのものを除去したり、転移を防いだりする効果は少ないものの、食欲不振やストレスの緩和などには優れた効果が期待できることが分かりました。

 

癌治療を円滑にすすめるうえでも漢方薬は有効な存在といえるでしょう。

 

しかし、癌治療に多額の費用がかかるなかで、さらに漢方薬まで処方されるとなるとコスト面での不安が頭をよぎる方も多いのではないでしょうか。

 

まず、大前提として漢方薬にもさまざまな種類があり、一概にどの程度のコストがかかるのかを断言することはできません。

 

症状によっては2種類、3種類の漢方薬が処方されることも考えられ、その分費用も高くなるでしょう。

 

ただし、多くの漢方薬は薬局などでも販売されており、決して高価なものではありません。

 

1週間あたり500円〜数千円以下で済む場合もあります。

 

そのため、漢方薬を取り入れたからといって大幅に治療費や入院費が上がる心配は少ないでしょう。

 

漢方薬|癌治療の現場で欠かせない

 

今回紹介してきたように、漢方薬単独では腫瘍を取り除く効果は少なく、直接的な治療に用いるケースは少ないです。

 

しかし、だからといって手術療法や放射線療法、化学療法だけでは患者の免疫力が低下することもあり、せっかく腫瘍を切除しても免疫力が低下し病状が悪化することもあるのです。

 

そこで、漢方薬を上手に取り入れることで、食欲不振やストレスの緩和といった副次的な症状を緩和でき、免疫力を高めながら回復をサポートすることができます。

 

癌治療の現場において、漢方薬は欠かせない重要な存在であるともいえるのです。

 

 

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漢方に関して不安やお悩みの事がございましたらお気軽に運龍堂までご相談下さい。

 

この記事の監修薬剤師

運龍堂 佐藤貴繁

略歴

1977年 北海道生まれ。北海道立札幌南高等学校
     北海道大学薬学部を卒業
2003年 薬剤師免許を取得
2006年 北海道大学大学院薬学研究科生体分子薬学
     専攻博士後期課程を終了後、博士(薬学)取得
2011年 福祉社会法人 緑仙会理事 就任
2012年 杜の都の漢方薬局 運龍堂 開局
2013年 宮城県自然薬研究会会長 就任
2017年 宮城県伝統生薬研究会会長 就任

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