2021/04/28
漢方薬一覧(カで始まる処方)
目次
- 化食養脾湯(カショクヨウヒトウ)
- 藿香正気散(カッコウショウキサン)
- 葛根黄連黄芩湯(カッコンオウレンオウゴントウ)
- 葛根紅花湯(カッコンコウカトウ)
- 葛根湯(カッコントウ)
- 葛根湯加川芎辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)
- 加味温胆湯(カミウンタントウ)
- 加味帰脾湯(カミキヒトウ)
- 加味逍遥散(カミショウヨウサン)
- 加味逍遥散合四物湯(カミショウヨウサンゴウシモットウ)
- 乾姜人参半夏丸(カンキョウニンジンハンゲガン)
- 甘草瀉心湯(カンゾウシャシントウ)
- 甘草湯(カンゾウトウ)
- 甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)
(カショクヨウヒトウ)
化食養脾湯
①胃腸虚弱、②みぞおちの痞え、③疲労、貧血
六君子湯の消化力を増強したもの。
※組成
人参(にんじん):ウコギ科、補虚薬 — 補気薬/微温
白朮(びゃくじゅつ):キク科、補虚薬 — 補気薬/温
茯苓(ぶくりょう):サルノコシカケ科、利水滲湿薬 — 利水消腫薬/平
半夏(はんげ):サトイモ科、化痰薬/温(有毒)
陳皮(ちんぴ):ミカン科、理気薬/温
大棗(たいそう):クロウメモドキ科、補虚薬 — 補気薬/温
生姜(しょうきょう):ショウガ科、解表薬— 発散風寒薬/微温
甘草(かんぞう):マメ科、補虚薬 — 補気薬/平
〜以上、「六君子湯」〜
神麹(しんきく)= 神曲(しんきょく):小麦科、消食薬/温
麦芽(ばくが):小麦科、消食薬/平
山査子(さんざし):バラ科、消食薬/微温
縮砂(しゅくしゃ)= 砂仁(しゃにん):ショウガ科、化湿薬/温
※生薬の解説
・人参と白朮には胃腸機能を改善し、元気をつけて補う作用がある。
・大棗—生姜は、胃腸を温め、機能を整える。
・半夏には、中枢性の鎮咳作用や鎮静鎮嘔作用があり、加えて粘液(痰)を溶解する作用もある。湿痰で量が多く粘度の高くない痰では、半夏が粘液(痰)を溶解し、茯苓が溶解した水(痰)を血中に吸収し、陳皮が痰の排出を促す。
・生姜は、中を温め、痰を化して除く。また甘草は諸薬を調和する。
・神麹と麦芽は、食の消化を助け、胃中の滞気を解消する。
・山査子は、胃酸減少を改善し、特に肉食の消化を助ける。
・縮砂は悪心、嘔吐を止める。
※使用目標例
・化食養脾湯は、六君子湯の消化力を増強したものである。心下部にしこりを感じ、みぞおちが痞え、疲れ易く、貧血性で、手足の冷え易いものを目標とする。
・胃炎、胃アトニー、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐、胃癌。
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(カッコウショウキサン)
藿香正気散
①腹痛下痢、②頭痛悪寒、③感冒
悪寒発熱を伴う下痢に吐瀉と呼ばれる激しい嘔吐と水様便が加わる症状に用いる。不換金正気散の目的と良く似ているが、さらに症状が激しい。
※組成
白朮(びゃくじゅつ):キク科、補虚薬 — 補気薬/温
厚朴(こうぼく):モクレン科、化湿薬/温
陳皮(ちんぴ):ミカン科、理気薬/温
大棗(たいそう):クロウメモドキ科、補虚薬 — 補気薬/温
生姜(しょうきょう):ショウガ科、解表薬— 発散風寒薬/微温
甘草(かんぞう):マメ科、補虚薬 — 補気薬/平
半夏(はんげ):サトイモ科、化痰薬/温(有毒)
藿香(かっこう):シソ科、化湿薬/微温
〜以上、「不換金正気散」(「白朮〜甘草」=「平胃散」)〜
茯苓(ぶくりょう):サルノコシカケ科、利水滲湿薬 — 利水消腫薬/平
桔梗(ききょう):キキョウ科、化痰薬/平
白芷(びゃくし):シソ科、解表薬 — 発散風寒薬/温
蘇葉(そよう)= 紫蘇葉(しそよう):シソ科、解表薬 — 発散風寒薬/温
大腹皮(だいふくひ):シュロ科、理気薬/微温
※生薬の解説
・朮、厚朴、陳皮には下痢、腹痛を止める整腸作用がある。朮は、消化管の水を血中に吸収して下痢を止める。厚朴は下痢に伴う腹痛を止める。陳皮は下痢を伴う消化不良によって引き起こされる食欲不振を改善する。
・陳皮は湿を取り、痰を化して、胃を温めて腹満を除く。また生姜は胃中の湿を除く。
・大棗、甘草は諸薬を調和する。
・平胃散は、諸臓器の湿を除いて、バランスを整える。半夏は水毒を改善し、また藿香は邪気を散ずる。この2味が平胃散に加わり、湿熱を駆逐する方剤に変化する。
・不換金正気散に、気剤である白芷、蘇葉、大腹皮、さらに湿を除く茯苓、桔梗が加えられ、藿香正気散は不換金正気散の発散と利尿の力を増強したものである。
※使用目標例
・体内に湿邪の原因があるところへ、気候不順が出会ったために、頭痛悪寒などの外証とともに腹痛下痢を訴える場合に使用する。不換金正気散の目的と良く似ているが、さらに症状が激しいものである。
・春寒、夏冷、秋暑、冬温の四季の気候不順のため感冒となったもの
・過食、美食、水まけのための急性胃腸炎、暑気あたり(夏バテ)、湿気のため浮腫するもの
・食滞咳嗽、小児などで他の原因なく、朝特に咳嗽するもの
・夜に口を開いて眠って、喉が痛むもの、歯痛、耳痛
※注意点
・散気の薬味が多いので、気虚や血虚の人には不適である。
・こむら返りと言われる腓腹筋痙攣に木瓜3gを加えて使う。夏には良く起こる症状である。
●黄芩湯VS藿香正気散
悪寒発熱を伴う下痢ではまず黄芩湯が思いつくが、黄芩湯証では吐き気がなく、また下痢の状態も裏急後重を伴うしぶり腹(残便感があり、繰り返し腹痛を伴い便意をもよおすもの)である。一方、藿香正気散では悪寒発熱を伴う下痢に吐瀉と呼ばれる激しい嘔吐と水様便が加わる。(藿香正気散が適当となる「暑気あたり」といわれる夏季の食欲不振、全身倦怠には、腹痛吐瀉はなくてもよい。)
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(カッコンオウレンオウゴントウ)
葛根黄連黄芩湯
①軽い発熱と肩こり、②自汗、③下痢
急性胃腸炎、口内炎、舌炎、肩こり、不眠などの症状に使用する。
※組成
葛根(かっこん):マメ科、解表薬 — 発散風熱薬/涼
黄連(おうれん):キンポウゲ科、清熱薬 — 清熱燥湿薬/寒
黄芩(おうごん):シソ科、清熱薬 — 清熱燥湿薬/寒
甘草(かんぞう):マメ科、補虚薬 — 補気薬/平
※生薬の解説
・黄連は、横隔膜前後から上の比較的実証の対する薬。黄芩は、横隔膜前後の熱を冷ます。
・葛根には、余計なこわばりを取り除く作用がある。特に首などのこわばりを取り除く作用がある。肩こり(主に首筋や脊椎の棘突起の両側)や緊張性頭痛に使う場合がある。
・甘草は急迫を緩和するとされ、脾胃を補い、肺を潤して毒を除き、諸薬を調和する。
・黄連のベルベリンと甘草のグリチルリチンの結合によって生ずる物質は腸内細菌の植生を変える作用があり、有毒細菌の産生する毒素によっての症状が消失する。
※使用目標例
・軽い発熱があって呼吸が苦しく、肩がこって、汗が出て、そして下痢をするという複合症状があれば、病名を問わず使用する。また結膜炎などの充血性の眼病、涙嚢炎などの涙の多い眼病で肩こりを目標に使う事もある。歯痛についても、また肩こりが目標となる。この場合、痛んで汗が出るなら一層効き目を確かにする。
・急性腸炎、消化不良、気管支喘息、肩のこり、ぎっくり腰
・結膜炎、涙嚢炎、トラホーム、歯痛、口内炎、舌痛、顔面痛で肩こりがあるもの。
※トラコーマ(トラホーム):トラコーマは伝染性の、慢性に経過する結膜炎のひとつである。トラコーマの重症度、経過によって、眼瞼下垂、角膜潰瘍など多くの合併症がみられることがある。
・不眠症で肩がこり、汗をかく実性のもの、高血圧
・心下痞、心悸、腹動、多汗、項背の凝り、左半身の知覚麻痺、左心室肥大、じっとしているのが嫌いな活動家というのを目標にして動脈硬化症、高血圧症に効果が上がっている。
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(カッコンコウカトウ)
葛根紅花湯
①酒渣鼻、②日光皮膚炎、③しみ
慢性的な経過を取る事から3〜4年の長期服用が必要となる。
※組成
葛根(かっこん):マメ科、解表薬 — 発散風熱薬/涼
紅花(こうか):キク科、活血化瘀薬 —活血調経薬/温
芍薬(しゃくやく):ボタン科、補虚薬 — 補血薬/微寒
(熟)地黄(じゅくじおう):ゴマノハグサ科、補虚薬 — 補血薬/微温
大黄(だいおう):タデ科、瀉下薬 — 攻下薬/寒
黄連(おうれん):キンポウゲ科、清熱薬 — 清熱燥湿薬/寒
山梔子(さんしし):アカネ科、清熱薬 — 清熱瀉火薬/寒
甘草(かんぞう):マメ科、補虚薬 — 補気薬/平
※生薬の解説
・葛根は、肌の熱を発散し、酒毒を解する。
・紅花は血の滞りを散ずる。また浄血作用もあって、芍薬とともに血行を良くする。
・地黄は血熱を覚まして陰を潤し、陽を退け、血糖降下作用や緩下、利尿作用などがある。
・大黄、黄連、山梔子は、ともに消炎、利尿、鎮静効果があり、鬱血炎症の除去に働く。
・甘草は急迫を緩和するとされ、脾胃を補い、肺を潤して毒を除き、諸薬を調和する。
※使用目標例
・酒渣鼻(しゅさび)に用いる。酒渣鼻とは頭部、顔面の充血、血管運動神経異常などの原因で鼻頭部、頬部、顎などに限局的な毛細血管拡張のための発赤が起こり、組織の増殖と腫脹を伴うものをいうが、慢性的な経過をとるから、3〜4年程度の長期間の服用が必要となる。
・酒渣鼻、日光皮膚炎
・ステイロイドアクネ(ステロイド潮紅)。この場合、桃核承気湯などの併用が良い。
※注意点
・紅花は多量に用いると瘀血を取り、少量だと血を活かす。本方の分量では活血である。瘀血があれば、紅花を増量するか、他の血証剤を併用すると良い。
・紅花は虫害を受け易い。また色の悪いものは増量して用いる。
・山梔子を胃腸虚弱な者に用いると、胃腸障害を起こし、下痢を起こす事がある。
・紅花の妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。投与により流早産の危険性があるので、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しない事が望ましい。
・大黄の妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。投与により流早産の危険性があるので、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しない事が望ましい。また大黄中のアントラキノン誘導体が母乳中に移行し、乳児が下痢を起こす事があるので、授乳中の婦人には慎重に投与すること。
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(カッコントウ)
葛根湯
①肩こり、②実証、③筋肉の緊張良好
悪寒と肩こりを伴う風邪の初期に用いる。
※組成
葛根(かっこん):マメ科、解表薬 — 発散風熱薬/涼
麻黄(まおう):マオウ科、解表薬 — 発散風寒薬/温
〜以下、「桂枝湯」〜
桂枝(けいし):クスノキ科、解表薬 — 発散風寒薬/温
芍薬(しゃくやく):ボタン科、補虚薬 — 補血薬/微寒
生姜(しょうきょう):ショウガ科、解表薬— 発散風寒薬/微温
大棗(たいそう):クロウメモドキ科、補虚薬 — 補気薬/温
甘草(かんぞう):マメ科、補虚薬 — 補気薬/平
桂枝湯に麻黄と葛根を加えた方剤で、比較的適応が幅広く、マイルドであるが、実証に使用する事ができる。
※生薬の解説
・葛根には、余計なこわばりを取り除く作用がある。特に首などのこわばりを取り除く作用がある。肩こり(主に首筋や脊椎の棘突起の両側)や緊張性頭痛に使う場合がある。
・麻黄には、鎮咳作用、気管支拡張作用、あるいは喉の痛みをとる抗炎症性作用がある。
・桂枝には、全般に様々な薬の作用を表に引っぱる力やのぼせを抑える力がある。
・麻黄には発汗作用があるが、これに血行を良くして体表を温める作用がある桂枝を配合すると、発汗作用が強くなり、悪寒を伴う表証(発熱、頭痛、肩こり、四肢痛、関節痛、脈浮)を発汗により解表(鎮痛)する。
・芍薬には、発汗の行き過ぎを抑える作用もある。
・大棗は緊張を緩和し心脾を補うとされ、補血、強壮、利尿作用がある。
・生姜は風寒を散し、胃気を益し、中を温め、湿を除く。健胃鎮嘔作用もある。
・甘草は急迫を緩和するとされ、脾胃を補い、肺を潤して毒を除き、諸薬を調和する。その他、抗炎症、抗アレルギー、抗潰瘍、高脂血症改善などの作用が確認されている。
・大棗、生姜、甘草の3味の組み合わせは、古来より多用されており、営衛の調和、すなわち自律神経系の調整と自然治癒力の回復に役立っているとされている。
※使用目標例
・太陽病では、首の後ろがこわばることがあるが、項背(うなじと背中)のこわばりが特に強くて、少し実証で、汗もかきにくいときは、葛根湯を適用する。これを応用して、急性熱性疾患ではないが、肩こりなどにも使える。寒気がして、ゾクゾクきたら、まずは葛根湯を一服のんでおけば、よほどもともと身体の弱い方でなければ、ある程度正解となる。
・悪寒と肩こりを伴う風邪の初期に用いる。葛根湯には、麻黄湯と同じく「麻黄—桂枝」が配合されているが、さらに芍薬を配合して発汗の行き過ぎを抑えるように配慮されている。このため、寒邪を追い出す作用は麻黄湯よりは弱いが、葛根の配合により、肩こりを緩和する作用がある。
・葛根と芍薬が筋肉をほぐすため、「顎が痛くて口が開きにくい」という開口障害にも効果を認める事がある。
※注意点
・風邪に葛根湯といって良く宣伝しているが、葛根湯を飲めば風邪が治ると勘違いしている人が大勢いる。葛根湯を飲めば風邪が治るのではない。葛根湯は発汗療法の一つで、うまく発汗させる必要がある。例えば、葛根湯を飲んで夜勤をしたら、熱ばかりが上がって苦しいだけで、ほとんど効かない。葛根湯を飲んだら、暖かくして眠り、うまく発汗させる必要がある。
・発熱性疾患を伴う膀胱炎では、葛根湯や麻黄湯などで発汗療法を行うと尿が濃縮して高浸透圧になり、症状が増悪して血尿が現れたりする。このような時に発汗療法は禁忌であり、小柴胡湯を中心とした和解法で対処する。膀胱炎には、猪苓湯を、血尿には四物湯、芎帰膠艾湯を合方して用いる。
・もし、発汗し過ぎて、ダラダラ流れるような大量の汗が止まらない場合、すぐに連絡するように説明しておく。その際は真武湯で対応する。
・平素から胃腸の虚弱な人、筋肉の弛緩した人、手足が冷えて小便が近い人にも用いる事が出来ない。
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(カッコントウカセンキュウシンイ)
葛根湯加川芎辛夷
①肩こり、②鼻づまり、③筋肉の緊張良好
葛根湯に川芎と辛夷を加えたものである。副鼻腔炎、慢性鼻炎に用いる。
※組成
葛根(かっこん):マメ科、解表薬 — 発散風熱薬/涼
麻黄(まおう):マオウ科、解表薬 — 発散風寒薬/温
桂枝(けいし):クスノキ科、解表薬 — 発散風寒薬/温
芍薬(しゃくやく):ボタン科、補虚薬 — 補血薬/微寒
大棗(たいそう):クロウメモドキ科、補虚薬 — 補気薬/温
生姜(しょうきょう):ショウガ科、解表薬— 発散風寒薬/微温
甘草(かんぞう):マメ科、補虚薬 — 補気薬/平
〜以上、「葛根湯」〜
川芎(せんきゅう):セリ科、活血化瘀薬 —活血止痛薬/温
辛夷(しんい):モクレン科、解表薬 — 発散風寒薬/温
※生薬の解説
・葛根には、余計なこわばりを取り除く作用がある。特に首などのこわばりを取り除く作用がある。肩こり(主に首筋や脊椎の棘突起の両側)や緊張性頭痛に使う場合がある。
・麻黄には、鎮咳作用、気管支拡張作用、あるいは喉の痛みをとる抗炎症性作用がある。
・桂枝には、全般に様々な薬の作用を表に引っぱる力やのぼせを抑える力がある。
・麻黄には発汗作用があるが、これに血行を良くして体表を温める作用がある桂枝を配合すると、発汗作用が強くなり、悪寒を伴う表証(発熱、頭痛、肩こり、四肢痛、関節痛、脈浮)を発汗により解表(鎮痛)する。
・芍薬には、発汗の行き過ぎを抑える作用もある。
・大棗は緊張を緩和し心脾を補うとされ、補血、強壮、利尿作用がある。
・生姜は風寒を散し、胃気を益し、中を温め、湿を除く。健胃鎮嘔作用もある。
・甘草は急迫を緩和するとされ、脾胃を補い、肺を潤して毒を除き、諸薬を調和する。その他、抗炎症、抗アレルギー、抗潰瘍、高脂血症改善などの作用が確認されている。
・大棗、生姜、甘草の3味の組み合わせは、古来より多用されており、営衛の調和、すなわち自律神経系の調整と自然治癒力の回復に役立っているとされている。
・川芎は精油分が多く、独特の香気を持っている。これが血行を良くして、特に頭部の鬱血、充血を取り除き、気を巡らし痛みと止める。
・辛夷は、肺を温め、鼻孔を通じて風寒を散ずる。
※使用目標例
・葛根湯加川芎辛夷には、葛根湯に頭痛ある者に川芎を加え、さらに鼻疾患に特効があるとされている辛夷を加えている。そのため、慢性腹鼻腔炎、蓄膿症などに応用される。
※注意点
・鼻汁が硬くて膿性の場合は薏苡仁を10g程加えると良い。
・川芎を胃腸虚弱な者に用いると、胃腸障害を起こす事がある。
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(カミウンタントウ)
加味温胆湯
①不眠症、②動悸、③精神不安
動悸を伴った精神不安による不眠症に用いる。
※組成
半夏(はんげ):サトイモ科、化痰薬/温(有毒)
茯苓(ぶくりょう):サルノコシカケ科、利水滲湿薬 — 利水消腫薬/平
陳皮(ちんぴ):ミカン科、理気薬/温
生姜(しょうきょう):ショウガ科、解表薬— 発散風寒薬/微温
甘草(かんぞう):マメ科、補虚薬 — 補気薬/平
竹茹(ちくじょ):イネ科、化痰薬/微寒
枳実(きじつ):ミカン科、理気薬/温
〜以上、温胆湯(「半夏〜甘草」=二陳湯)〜
酸棗仁(さんそうにん):クロウメモドキ科、安神薬 — 養心安神薬/平
玄参(げんじん):ゴマノハグサ科、清熱薬 — 清熱解毒薬/寒
遠志(おんじ):ヒメハギ科、安神薬 — 養心安神薬/微温
人参(にんじん):ウコギ科、補虚薬 — 補気薬/微温
(熟)地黄(じゅくじおう):ゴマノハグサ科、補虚薬 — 補血薬/微温
大棗(たいそう):クロウメモドキ科、補虚薬 — 補気薬/温
※生薬の解説
・半夏には、中枢性の鎮咳作用や鎮静鎮嘔作用があり、加えて粘液(痰)を溶解する作用もある。湿痰で量が多く粘度の高くない痰では、半夏が粘液(痰)を溶解し、茯苓が溶解した水(痰)を血中に吸収し、陳皮が痰の排出を促す。
・茯苓は水を巡らして胃内停水を改善し、陳皮は気を巡らして、胃中を温め消化を助ける。
・生姜は、中を温め、痰を化して除く。また甘草は諸薬を調和する。
・枳実には理気によって気結・欝滞を散開する破気の作用がある。
・竹茹には、順気や鎮静の効果がある。
・酸棗仁は中枢神経を抑制し、持続する鎮静作用がある。
・玄参、遠志、人参は栄養剤であり、しかも精神安定作用を持っている。
・地黄は血熱を覚まして陰を潤し、陽を退け、血糖降下作用や緩下、利尿作用などがある。
・大棗は緊張を緩和し心脾を補うとされ、補血、強壮、利尿作用がある。
・大棗、生姜、甘草の3味の組み合わせは、古来より多用されており、営衛の調和、すなわち自律神経系の調整と自然治癒力の回復に役立っているとされている。
※使用目標例
・温胆湯よりも体の弱った者に使用する。
・不眠症、不眠症に随伴する驚悸症、心悸亢進、気鬱症、胃障害、神経症
※注意点
・不眠症には、症状によって半夏瀉心湯、酸棗仁湯、柴胡加竜骨牡蠣湯、抑肝散、温胆湯、加味温胆湯を使い分ける。陽性の精神不安には三黄瀉心湯、怒りっぽいのは抑肝散、驚き易いのは柴胡加竜骨牡蠣湯、そして陰性で精神不安なら温胆湯や酸棗仁湯、動悸が加われば加味温胆湯となる。
・指針には誤りがあるため、玄参を五味子に変えた方が良い。
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(カミキヒトウ)
加味帰脾湯
①貧血、②抑うつ、③不眠
帰脾湯に柴胡、山梔子、牡丹皮を加えたものである。虚証〜中間症に用い、うつ病の第一選択薬である。血小板減少性紫斑症に用いると、血小板の増加をみることがある。
※組成
人参(にんじん):ウコギ科、補虚薬 — 補気薬/微温
白朮(びゃくじゅつ):キク科、補虚薬 — 補気薬/温
茯苓(ぶくりょう):サルノコシカケ科、利水滲湿薬 — 利水消腫薬/平
大棗(たいそう):クロウメモドキ科、補虚薬 — 補気薬/温
生姜(しょうきょう):ショウガ科、解表薬— 発散風寒薬/微温
甘草(かんぞう):マメ科、補虚薬 — 補気薬/平
当帰(とうき):セリ科、補虚薬 — 補血薬/温
黄耆(おうぎ):マメ科、補虚薬 — 補気薬/微温
遠志(おんじ):ヒメハギ科、安神薬 — 養心安神薬/微温
木香(もっこう):キク科、理気薬/温
竜眼肉(りゅうがんにく):ムクロジ科、補虚薬 — 補血薬/温
酸棗仁(さんそうにん):クロウメモドキ科、安神薬 — 養心安神薬/平
〜以上「帰脾湯」(「人参〜甘草」=四君子湯)〜
柴胡(さいこ):セリ科、解表薬 — 発散風熱薬/微寒
山梔子(さんしし):アカネ科、清熱薬 — 清熱瀉火薬/寒
牡丹皮(ぼたんぴ):ボタン科、清熱薬 — 清熱解毒薬/微寒
※生薬の解説
・人参と白朮には胃腸機能を改善し、元気をつけて補う作用がある。白朮には胃内の停水を除き、人参と組んで弛緩した胃腸を引き締める作用がある。
・人参には、造血作用と胃酸を増加させる作用がある。
・白朮、茯苓ともに消化管の水や、関節内の水、筋肉内の浮腫、組織間の水など、過剰な水分を血中に吸収して利尿する。
・生姜と甘草は内部を温める温裏作用を持つ。
・大棗は、鎮静、鎮痙作用がある。そして甘草は、大棗とともに痙攣を抑制する。また大棗、甘草は諸薬を調和する。
・当帰、竜眼肉には増血作用がある。
・酸棗仁、遠志には、鎮静作用がある。
・黄耆は皮膚、四肢、顔面の浮腫を利尿作用により除き、自汗を止める作用がある。
・木香には健胃作用がある。
・柴胡は、イライラ、緊張、不安、憂鬱などの精神的ストレスを解消する。「疎肝解鬱」の作用があり、ストレスに伴う自律神経支配領域の運動機能異常や、背部、胸脇部の筋緊張による膨満感、違和感、凝りなどを治す。
・山梔子と牡丹皮には、清熱止血作用があり、怒り、イライラ、興奮、出血性炎症を治す作用がある。
※使用目標例
・加味帰脾湯→出血、血尿、下血、膀胱腫瘍、子宮内膜症、血小板減少症、再生不良性貧血、白血病、不眠症(取り越し苦労の不眠症に)、ノイローゼ、ヒステリー、うつ病、統合失調症、遺精力、月経不順、性交時出血
・帰脾湯→貧血、出血、悪性貧血、再生不良性貧血、月経不順、神経症、うつ病、分裂病、健忘症、不眠症、大便不調、盗汗
※注意点
・症状が悪化する場合があるので、実証のものに用いてはならない。
・白血病やバンチ病などにも効果を発揮する場合がある。
バンチ病=特発性門脈圧亢進症。門脈の静脈圧が亢進し、臨床的に脾腫、貧血、食道静脈瘤、腹水、全身倦怠感などを示す。
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(カミショウヨウサン)
加味逍遥散
①不定愁訴、②中高年女性、③更年期障害
中高年女性で、婦人科手術の既往があり、様々な不定愁訴を訴える更年期障害、神経症、慢性肝炎などに用いる。
※組成
当帰(とうき):セリ科、補虚薬 — 補血薬/温
芍薬(しゃくやく):ボタン科、補虚薬 — 補血薬/微寒
柴胡(さいこ):セリ科、解表薬 — 発散風熱薬/微寒
白朮(びゃくじゅつ):キク科、補虚薬 — 補気薬/温
茯苓(ぶくりょう):サルノコシカケ科、利水滲湿薬 — 利水消腫薬/平
生姜(しょうきょう):ショウガ科、解表薬— 発散風寒薬/微温
薄荷(はっか):シソ科、解表薬 — 発散風熱薬/涼
甘草(かんぞう):マメ科、補虚薬 — 補気薬/平
〜以上、「逍遥散」〜
山梔子(さんしし):アカネ科、清熱薬 — 清熱瀉火薬/寒
牡丹皮(ぼたんぴ):ボタン科、清熱薬 — 清熱解毒薬/微寒
※生薬の解説
・当帰と芍薬は、下垂体、卵巣や子宮に作用して月経障害を調整する作用も兼ねている。
・柴胡は、イライラ、緊張、不安、憂鬱などの精神的ストレスを解消する。「疎肝解鬱」の作用があり、ストレスに伴う自律神経支配領域の運動機能異常や、背部、胸脇部の筋緊張による膨満感、違和感、凝りなどを治す。また、女性の精神的ストレスによる月経痛、乳房腫瘍にも有効である。芍薬は、平滑筋、骨格筋の痙攣や痙攣性疼痛を緩解する作用があり、柴胡に働きを助けて、自律神経を鎮静し、精神的ストレスによるイライラ、緊張を治す。さらに不安、憂鬱、眩暈、ふらつき、胸脇部の痛みなどを治す。
・生姜は風寒を散し、胃気を益し、中を温め、湿を除く。健胃鎮嘔作用もある。
・薄荷は憂鬱感や精神的な原因による胸の痞えや胸肋の膨満感を治し、柴胡、芍薬、甘草とともに精神的ストレスによる無月経、月経不順に有効である。
・白朮、茯苓ともに消化管の水や、関節内の水、筋肉内の浮腫、組織間の水など、過剰な水分を血中に吸収して利尿する。
・茯苓も精神的な心悸亢進、不眠に効く。
・山梔子と牡丹皮には、清熱止血作用があり、怒り、イライラ、興奮、出血性炎症を治す作用がある。
※使用目標例
・柴胡が入っていて、柴胡剤と駆瘀血剤を混ぜたようなタイプである。ただし小陽病の虚証なので、弱い胸脇苦満があって、腹力が弱く、左側の臍傍に圧痛があり、動悸が少し触れる事が多い。また少し熱がこもっている。「冷え性に適応する」と言われているが、冷えではなくむしろ熱がこもっているのが特徴である。舌質は熱っぽい感じの赤色をしていて締まった感じの形が多く、加味逍遥散証は「柴胡桂枝乾姜湯」−「寒」+「熱」+「瘀血」となる。
・特徴的な症候は、かっと熱くなって発汗し、すっと引くという「熱のふけさめ」があることである。そのため、更年期障害の第一選択薬として有名な方剤である。全体としては、小陽病の虚証で胸脇苦満が軽くあり、舌が赤くて熱のふけさめがあるときが典型的な適応である。
・「月経前のイライラ」を取る処方で、しかも便秘であれば加味逍遥散と桃核承気湯しかない。桃仁+桂枝が月経前のイライラに良い。桂枝茯苓丸もこの配合があるので、「月経前のイライラ」に良い。
・月経のある女性であれば、「精神的ストレス」、「月経は遅れがち(すなわち月経不順)」、「便秘気味」の3つが揃えば、加味逍遥散の使用目標。肩こりも可。
・少陽病の虚候状態で疲れ易く、頭痛や頭重感、肩こりが良く現れ、午前は貧血気味、午後はのぼせ気味の傾向があり、微熱、または時に灼熱感を伴い、種々の不定愁訴多く、あせりっぽくて気分の変動多いタイプが目標となる。
・月経前緊張症:月経前にイライラ、怒りっぽい、頭痛、肩こり、乳房腫脹のある者。さらに、のぼせ、頬部の紅潮、目の充血、ひどく怒りっぽい、鼻出血、寒くなったり、カーッと熱くなって汗が出る、不眠、良く目が覚めるなどの者に用いる。
・訴えの多い女性にはまず加味逍遥散を考える。よく症状を加味に列記して来る人がいるが、大抵が加味逍遥散である。
・更年期障害:月経不順、体が熱くなったり寒くなったりする、午後になるとほてり、汗が出る、のぼせる、顔が熱くなる、めまい感、鼻出血などある者に用いる。
・漢方の「女性向け三種の神器」
当帰芍薬散→「水」の流れを改善し、「血」を補う。
桂枝茯苓丸→「血」の流れを改善する。
加味逍遥散→「血」を補い、消化を助け、精神安定させる。
※注意点
・頭痛、のぼせが無い場合は、加味逍遥散よりも逍遥散の方が良い。逍遥散に地黄と香附子を加えると良い。
・当帰を胃腸虚弱な者に用いると、胃腸障害を起こし、下痢を起こす事がある。
・牡丹皮の妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。投与により流早産の危険性があるので、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しない事が望ましい。
・山梔子を胃腸虚弱な者に用いると、胃腸障害を起こし、下痢を起こす事がある。
●加味逍遥散VS柴胡桂枝乾姜湯
加味逍遥散証のお腹の形は、柴胡桂枝乾姜湯のような肋骨下部に段がついて腹が陥没していることが多いが、臍傍の圧痛があり、皮膚に少し艶がある。一方、柴胡桂枝乾姜湯の時には皮膚の艶はない。また柴胡桂枝乾姜湯は冷えがあるので、舌はむしろ赤みが薄く白っぽい事が多い。加味逍遥散の場合、皮膚に艶があり、舌が赤いので、このような点で両者の鑑別がつく。
●加味逍遥散VS 女神散
加味逍遥散証は愁訴がとりとめもなく多い事、そしてこの愁訴が変化していくが、女神散証では愁訴が固定しており、これが鑑別の要点である。自律神経失調症ないしノイローゼと言えば加味逍遥散ではあるが、それで解決出来ない場合が非常に多い。そんな時に女神散が適応だと思われることがある。
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(カミショウヨウサンゴウシモットウ)
加味逍遥散合四物湯
①皮膚病、②肝斑、③虚証
皮膚が枯燥し、色つやの悪い体質虚弱な婦人で胃腸障害はなく、肩がこり、疲れやすく者に用いる。
※組成
当帰(とうき):セリ科、補虚薬 — 補血薬/温
芍薬(しゃくやく):ボタン科、補虚薬 — 補血薬/微寒
柴胡(さいこ):セリ科、解表薬 — 発散風熱薬/微寒
白朮(びゃくじゅつ):キク科、補虚薬 — 補気薬/温
茯苓(ぶくりょう):サルノコシカケ科、利水滲湿薬 — 利水消腫薬/平
生姜(しょうきょう):ショウガ科、解表薬— 発散風寒薬/微温
薄荷(はっか):シソ科、解表薬 — 発散風熱薬/涼
甘草(かんぞう):マメ科、補虚薬 — 補気薬/平
山梔子(さんしし):アカネ科、清熱薬 — 清熱瀉火薬/寒
牡丹皮(ぼたんぴ):ボタン科、清熱薬 — 清熱解毒薬/微寒
〜以上、「加味逍遥散」〜
川芎(せんきゅう):セリ科、活血化瘀薬 —活血止痛薬/温
(熟)地黄(じゅくじおう):ゴマノハグサ科、補虚薬 — 補血薬/微温
四物湯=当帰、川芎、芍薬、地黄(当帰と芍薬は重複)
※生薬の解説
・当帰と芍薬は、下垂体、卵巣や子宮に作用して月経障害を調整する作用も兼ねている。
・柴胡は、イライラ、緊張、不安、憂鬱などの精神的ストレスを解消する。「疎肝解鬱」の作用があり、ストレスに伴う自律神経支配領域の運動機能異常や、背部、胸脇部の筋緊張による膨満感、違和感、凝りなどを治す。また、女性の精神的ストレスによる月経痛、乳房腫瘍にも有効である。芍薬は、平滑筋、骨格筋の痙攣や痙攣性疼痛を緩解する作用があり、柴胡に働きを助けて、自律神経を鎮静し、精神的ストレスによるイライラ、緊張を治す。さらに不安、憂鬱、眩暈、ふらつき、胸脇部の痛みなどを治す。
・生姜は風寒を散し、胃気を益し、中を温め、湿を除く。健胃鎮嘔作用もある。
・薄荷は憂鬱感や精神的な原因による胸の痞えや胸肋の膨満感を治し、柴胡、芍薬、甘草とともに精神的ストレスによる無月経、月経不順に有効である。
・白朮、茯苓ともに消化管の水や、関節内の水、筋肉内の浮腫、組織間の水など、過剰な水分を血中に吸収して利尿する。
・茯苓も精神的な心悸亢進、不眠に効く。
・山梔子と牡丹皮には、清熱止血作用があり、怒り、イライラ、興奮、出血性炎症を治す作用がある。
・当帰と川芎には、皮膚、筋肉、関節、骨、神経などの外部や経路を温める作用があり、外表、四肢末梢の血行を促進して冷え性を治す。また動脈の血流を良くして(活血作用)、駆瘀血の作用を助ける。当帰は主に四肢、下半身の血流を良くして冷え性を治す。川芎は主に上半身の血流を良くして頭痛を治す。
・芍薬には、筋肉の異常緊張を和らげる作用がある。また血液成分の中の水分を利水する。
・当帰、川芎、芍薬、地黄の4味で、四物湯となる。四物湯は補血作用があり、皮膚・筋肉・骨の老化防止、造血・調経による貧血や生理不順の改善、止血作用などがある。
・地黄、芍薬には止血作用があり、主に静脈性の出血に用いる。特に地黄には消炎止血作用(清熱涼血)や血流の異常を正常化する作用がある。
※使用目標例
・加味逍遥散と言えば、神経質な女性を連想するが、このように虚証の女性、あるいは男性でも悪液質の人の皮膚病、ことに面疱、肝斑に良く用いられる。湿疹一般にも用いられるが、乾燥性でかゆみが激しいものに良い。また化粧品かぶれに続く再発性顔面皮膚炎や、その後のリール黒皮症にも奏効する。ただし、やせ型の栄養の悪い人という条件と、少なくとも1年以上の長期間にわたっての服用が必要である事を忘れてはいけない。
・肝斑、リール黒皮症、にきび、女子顔面再発性皮膚炎、慢性湿疹、進行性指掌角皮症(いわゆる手荒れ)。
リール黒皮症:しみと違って、顔全体の皮膚が紫褐色ないし紫灰色に着色してくる病気。繰り返された化粧品皮膚炎や、これと日光照射との相乗効果、光線過敏症、脂漏性皮膚炎などがその原因と考えられる。
女子顔面再発性皮膚炎:思春期より中年の女子の顔面に反復して現れる潮紅、浮腫と色素沈着で 脂漏性湿疹の1型となすものであるが日光性皮膚炎と鑑別が必要。
※注意点
・にきびには、清上防風湯、当帰芍薬散加薏苡仁、桂枝茯苓丸加薏苡仁などが使用されるが、これらが効かない場合、本方が奏効する場合が多い。
・甘いものが好き、水分をよく飲む、という人に加味逍遥散合四物湯が使われる機会が多い。
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(カンキョウニンジンハンゲガン)
乾姜人参半夏丸
①症状の激しいつわり、②嘔吐、③胃虚による手足の冷え
体力が衰え、嘔気、嘔吐のやまないつわり、胃炎、胃アトニーなどの症状に用いる。
※組成
乾姜(かんきょう):ショウガ科、温裏薬/熱
〜以下、「大半夏湯」〜
人参(にんじん):ウコギ科、補虚薬 — 補気薬/微温
半夏(はんげ):サトイモ科、化痰薬/温(有毒)
※生薬の解説
・乾姜は内部を温める温裏作用を持つ。乾姜は主にお腹が温めて、冷えによって起こる腹痛、下痢、悪心、嘔吐などを治す。
・人参には、造血作用と胃酸を増加させる作用がある。また眩暈を改善する作用もある。
・半夏には中枢性の鎮嘔制吐作用、鎮咳作用がある。
※使用目標例
・つわりの薬として有名なのは、小半夏茯苓湯である。しかし、衰弱が激しくなった場合、小半夏茯苓湯では間に合わず、乾姜で体を温め、半夏で嘔を止め、人参で眩暈を回復させる必要があり、これが乾姜人参半夏丸となる。また、つわりではないが、原因を問わず、嘔吐が止まらず、胃気が虚しているものに用いても即効がある。
・つわりやその他の嘔吐で体が衰弱しているもの。
・胃の虚寒で手足が冷え、心下痞鞭するもの。
※注意点
・使用上の注意に温めて服用するように指示されているが、温める必要は無い。むしろ冷たいまま、あるいは氷に浮かして飲むと良い。
・猪苓散もまた、つわりに使う。乾姜人参半夏丸との鑑別は、のどが乾かない、水は欲しがらないのに、吐いた後、甚だしく水を飲みたがる特異な症状を示したら、猪苓散を適応する。
・乾姜の常用量は、1〜2gであるが、通常量を超えると、特有の刺激があり、口や舌に痺れ感が出現することがある。
・人参は、元気が衰えた者に適応であるが、実証に大量に用いると、のぼせ、鼻出血、血圧上昇が起こる事がある。
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(カンゾウシャシントウ)
甘草瀉心湯
①浅眠、②嘔吐、③胃虚による手足の冷え
みぞおちがつかえた感じのある胃・腸炎、口内炎、口臭、不眠症、神経症などの症状に用いる。
※組成
半夏(はんげ):サトイモ科、化痰薬/温(有毒)
乾姜(かんきょう):ショウガ科、温裏薬/熱
黄連(おうれん):キンポウゲ科、清熱薬 — 清熱燥湿薬/寒
黄芩(おうごん):シソ科、清熱薬 — 清熱燥湿薬/寒
人参(にんじん):ウコギ科、補虚薬 — 補気薬/微温
大棗(たいそう):クロウメモドキ科、補虚薬 — 補気薬/温
甘草(かんぞう):マメ科、補虚薬 — 補気薬/平
半夏瀉心湯中の甘草の比率を増やしたもの
※生薬の解説
・半夏は吐き気を取る作用がある。
・大棗は、鎮静、鎮痙作用がある。また甘草は、大棗とともに痙攣を抑制する。これらの鎮痙鎮静作用によりヒステリーやてんかんの痙攣などを治す。
・黄連は、横隔膜前後から上の比較的実証の対する薬。黄芩は、横隔膜前後の熱を冷ます。
・乾姜は、体を温める作用がある。従って、黄蓮や黄芩で熱を冷ましながらも、乾姜で胃の辺りを温めて活力をつけ、補う作用を持っている。
※瀉心湯類
漢方処方の分類で「黄芩」と「黄連」を主薬とする処方群である。瀉心とは「心下のつかえ感を去る」と定義され、胸やみぞおちのつかえがある人を目標としている。代表的な方剤に半夏瀉心湯、生姜瀉心湯、甘草瀉心湯、三黄瀉心湯、黄連解毒湯などがある。前3つの処方の構成生薬は同じであるが、甘草瀉心湯は甘草を増量し、生姜瀉心湯は乾姜を減らして生姜を加味している。半夏瀉心湯は軽い吐気や嘔吐、食欲不振、腹中雷鳴を目標とし、生姜瀉心湯は嘔吐が激しいときに、甘草瀉心湯は消化管全体が虚し下痢が続く場合および精神不安を伴う場合に用いる。一方、主薬二味に大黄を加えた三黄瀉心湯は消炎瀉下薬と考えられ、上半身の充血を鎮める意味を持ち、高血圧の諸症状で便秘のある人に用いる。便秘のない場合は黄連解毒湯とし、皮膚瘙痒症にも適応する。これら2種の処方は虚している人には使用しない。
※使用目標例
・柴胡が入っていないので、胸脇苦満はないが、黄蓮、黄芩が入っている方剤は、心下の痞(みぞおちのつかえ)をとる作用があり、使用目標となる。また人参が入っており、心下が単につかえるだけでなく、抵抗(鞭)がある時に使う。腹部の所見は、虚実間であるため、腹力は中程度から少し弱く、心下痞鞭があるということになる。
・トイレから戻ってくると、すぐに便意を催す。頻発する下痢に使用する。
・胃炎、腸炎、胃腸炎、消化不良、食傷、神経性下痢、腹鳴、心下痞鞭するもの。あるいは嘔吐、腹痛を伴う事がある。
・胃アトニー、胃拡張、胃下垂、食欲不振などで、胃部が重苦しく痞え、食欲減退、あるいは不眠不安などの神経症状があり、あるいは腹鳴、げっぷ、軟便などがあるもの。
・神経衰弱、ノイローゼ、統合失調などの神経不安、イライラ、不眠、錯覚、幻想、気鬱、気分が変わり易いなどがあり、あるいは心下痞鞭、腹鳴下痢があるもの。
・吐血、咯血で興奮しているが、三黄瀉心湯ほど、のぼせや顔面紅潮のないもの。
・声が枯れているもので精神不安、興奮、不眠、心下痞鞭などがあるもの。
※注意点
・甘草瀉心湯の不眠は、多夢による不眠であって、浅眠で全く眠れないのではない。
・ビールを飲んで下痢を訴える人に甘草瀉心湯が適応となる場合が多い。また口内炎にも散るときはビタミンB2と併用するのが良い。
・腹がゴロゴロというのが甘草瀉心湯の下痢で、雷鳴のない下痢は人参湯や四逆湯である。
・乾姜は生姜を使いたい。
・乾姜の常用量は、1〜2gであるが、通常量を超えると、特有の刺激があり、口や舌に痺れ感が出現することがある。
・人参は、元気が衰えた者に適応であるが、実証に大量に用いると、のぼせ、鼻出血、血圧上昇が起こる事がある。
●半夏瀉心湯VS生姜瀉心湯VS甘草瀉心湯VS 人参湯
半夏瀉心湯は吐き気が中心である。ゲップや胸やけがあれば、生姜瀉心湯となる。急迫症状、例えば下痢であれば頻回であったり、冷えが強そうな時は、甘草瀉心湯を用いる。下痢は半夏瀉心湯の場合は、軽くて軟便に近く、甘草瀉心湯の場合は水溶性の下痢である。人参湯の場合も下痢便で間違え易いが、甘草瀉心湯の場合は下痢をして、腸の内容物が出てしまうと一時的に気分が良くなるのに対して、人参湯の場合は下痢をすると疲労感が増すようである。甘草瀉心湯で下痢がひどくなる場合は、人参湯を、その反対は甘草瀉心湯の適応を考える。
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(カンゾウトウ)
甘草湯
①急迫症状、②咽頭痛、③痔疼痛(外用)
激しい咳、腹痛、咽頭痛に用いる事が多い。
※組成
甘草(かんぞう):マメ科、補虚薬 — 補気薬/平
※生薬の解説
・甘草には、抗潰瘍作用、抗炎症作用、鎮痙作用、鎮咳作用、免疫抑制作用、抗アレルギー作用などがある。
※使用目標例
・「甘草、急迫を治す」とあり、咽痛だけではなく、その他の急迫症状である、激しい咳、歯痛、痔、打撲痛、急性腹症の疼痛などに頓服的に使用して劇的な効果を得る事が多い。ただ一時的に急迫症状を除くだけなので、次の対策を講じる必要はある。また外用としてもその煎じ液で湿布することによって、痔や外傷の疼痛を緩和する事が出来る。
・各種の急迫症状で、局所的で、他の部分や全身的には変化のないもの。例えば、咽頭痛、疼痛、痙攣、呼吸促進、窒息、心悸亢進、咳嗽(がいそう)、上逆、胃痙攣などの腹痛発作、尿閉、排尿痛、薬物中毒、肉や菌類などの中毒、虫さされ、急に声がつぶれたもの。
※注意点
・甘草湯と桔梗湯で使用する甘草は炙甘草ではない。
・ほとんどが無熱性で、時に有熱性であっても頭痛などの陽証、表証がないことに留意する必要あり。
・甘草湯に使用により、世の中で言われている「浮腫、高血圧、胸やけ」などが現れる事は、頓服的に用いる程度では全くない。続服すれば起こる事もあるが、その場合は五苓散を用いれば解決する。
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(カンバクタイソウトウ)
甘麦大棗湯
①けいれん、②神経過敏、③あくび
小児の夜泣き、ヒステリー、チックなどに用いる。
※組成
甘草(かんぞう):マメ科、補虚薬 — 補気薬/平
大棗(たいそう):クロウメモドキ科、補虚薬 — 補気薬/温
小麦(しょうばく、こむぎ):イネ科コムギ、安神薬/涼
※生薬の解説
・大棗は、鎮静、鎮痙作用がある。また甘草は、大棗とともに痙攣を抑制する。これらの鎮痙鎮静作用によりヒステリーやてんかんの痙攣などを治す。
・小麦は、心気を養うとともに肝気の虚を補う。また鎮静作用もあるとされる。
※使用目標例
・婦人が臓操というヒステリーにかかって、感情の変動が激しく、泣こうとしたり、物の怪に取り付かれたような動作をして、しばしばあくびをする者には、本方を用いる。
・小麦には「抗悲哀作用」みたいなものがあるので、クヨクヨしたり、シクシクないてしまうような場合に良い。
・大棗は大量に用いると精神安定作用があり、全体でわけもなく不安になり、取り乱してなくような患者に意外と良い。
・ヒステリーの転換反応:痙攣、矢立、失行、演技的態度、幼稚症などを呈する者に用いる。
・てんかんの痙攣発作、小児の夜泣き、ひきつけ、パーキンソン症候群の痙攣などに対して用いる。
※注意点
・甘草を多く含むので要注意である。睡眠前や頓服であれば、安全に使える。
・本証は動的で急激である。証を見てから煎じているのでは間に合わない。静的なものは半夏厚朴湯である。
・法に合うかどうかは問題だが、甘草と大棗を煎じた液に小麦粉を混ぜたものでも効く。
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漢方薬の論文
英語論文
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