


妊娠中に漢方の服用が推奨される理由について詳しく解説

妊娠中は、体の不調や変化に敏感になりやすく、つわりや浮腫といった症状に悩まれる方は少なくありません。
自然由来の生薬を処方した漢方薬は、産婦人科でも処方されるなど、妊娠中でも服用していただくことが可能です。
本記事では、妊娠中の方に漢方が推奨される理由と代表的な漢方薬について、詳しく解説します。
併せて、漢方薬を選ぶ際の注意点と、妊娠中に漢方薬を服用された方の体験談をご紹介します。
妊娠による体の不調でお悩みの方は、参考にしてみてはいかがでしょうか。
目次
妊娠中に漢方が推奨される理由
漢方は二千年以上の年月をかけて、有効性と安全性の高いものが現代に引き継がれました。
そのため、多くの漢方が妊娠中の女性や胎児に対して比較的安全であると考えられ、推奨されています。
なぜ漢方が比較的安全で、妊娠中に漢方が推奨されるのか、理由を詳しく解説します。
妊娠特有の症状への対応
約二千年前の中国で作られた、「金匱要略(きんきようりゃく)」という漢方医学の原典では、全25編のうち3編が婦人妊娠病などの婦人病にあてられています。
また、その他の漢方医学におけるさまざまな文献において妊娠や分娩について言及されています。
そのため、漢方医学では妊娠特有の症状への対応が古くから研究され、現代では産科の分野で西洋医学による裏付けがされるようになりました。
漢方では、次のような妊娠特有の症状に対応します。
- ・血液を補う
- ・気の流れを改善する(頭痛や胸のつまり、精神状態の安定など)
- ・体内の熱を冷まし血液を保つ(清熱養血)
また、妊娠中は過度な発汗や瀉下(下痢)、多尿になる程の飲水は漢方医学において「三禁」とされています。
三禁を沈めるためにも、漢方薬が用いられることがあります。
自然由来の成分
漢方薬は、自然由来の生薬を調合した薬です。植物の根や茎、また動物の皮や鉱物を主な原料としています。
患者様一人ひとりの体調に合わせて処方され、「安胎薬」という言葉の通り、胎児の安定を目指すための薬として古くから使われていました。
妊娠中は慎重に使用しなければならない生薬もあります。しかし、母体や胎児に影響が少なく、体の不調に適した処方がされた漢方は母体の不調を改善し、胎児が安心できる環境を作ることができます。
母体と胎児の健康維持
漢方医学では、妊娠を「養胎優先」の状態と表現します。養胎優先とは、母体が胎児を養うことを優先するという考え方です。
母体の不調が続くと、胎児にも影響が出てしまいます。そのため、漢方は母体の不調を改善し、胎児の成長を促すことを目的としています。
関連記事:漢方の効き目とは?効果を引き出す正しい使い方と選び方を紹介
妊娠中に使われる代表的な漢方薬
妊娠中に次のような不調が出たとき、漢方薬が処方されることがあります。
- ・つわり(悪心・嘔吐)
- ・お腹の張りや貧血
- ・手足のむくみ
- ・風邪症状
それぞれの症状で使われる代表的な漢方薬をご紹介します。
つわり(悪心・嘔吐)に対して
つわりは、漢方医学では子病や病児・阻病などと呼ばれ、胃の気が上昇する(胃気上昇)ために起きると考えられています。
つわりによる不調には、小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)という漢方がよく処方されます。
小半夏加茯苓湯は気の乱れを正して吐き気を鎮める効果がある「半夏」や、体を温めて胃腸の働きを促す「生姜」、「茯苓(茯苓)」を調合した漢方薬です。
つわりの症状が強いときには「半夏厚朴湯」、反対に初期の場合には「桂枝湯」や「半夏瀉心湯」を用いることがあります。
いずれも生姜が含まれており、海外でも妊娠中の悪阻に対して生姜が効果があるという研究結果があります。
関連記事:半夏厚朴湯の飲み合わせの禁忌や副作用について徹底解説
お腹の張りや貧血
お腹の張りや貧血には、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」が使われます。
当帰芍薬散は、張りや貧血だけでなく、切迫流産の可能性がある場合にも処方される漢方薬です。頻脈や動機、震えなどを緩和させる作用があり、塩酸リトドリンとの併用を指示されることがあります。
関連記事:当帰芍薬散にはどんな効果がある?気になる副作用や長期の服用についても徹底解説
手足のむくみ
手足のむくみを改善するためには、体内にある不要な水分の排出を促す「柴苓湯(さいれいとう)」や、「五苓散(ごれいさん)」がよく使われます。
漢方薬による利水は、西洋薬で使われる利尿剤とは異なり、過剰に水分を排泄することはありません。
そのため脱水症状になることは少なく、体内の電解質のバランスを維持することができます。
関連記事:五苓散の効果がすごい!二日酔いやむくみに効果あり!
風邪症状
妊娠中に風邪症状がみられたときは、症状によって異なる漢方薬が処方されます。
熱が出ていない風邪の初期症状のときは、気の流れを改善する作用のある「香蘇散(こうそうさん)」や「桂枝湯(けいしとう)」がよく使われます。軽い悪寒や頭痛の症状改善が期待できる漢方薬です。
熱が上昇し胸に不快感が出てしまったときには、「小柴胡湯(しょうさいことう)」など、解熱作用や炎症を抑える効果がある漢方薬が処方されます。
その他に、咳や痰でお悩みのときには「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」が処方されることもあります。
妊娠中に服用する漢方を選ぶ際の注意点
自然由来の生薬から作られる漢方は、妊娠中でも安全に服用することができます。
しかし、全ての漢方が妊娠中に服用できるということではありません。妊娠中は慎重に服用するべき生薬があります。
また、体質や症状に合わないと副作用が出てしまう可能性があり、注意が必要です。
特定の生薬に注意
妊娠中は、麻黄(まおう)や大黄(だいおう)などが含まれる漢方には注意が必要です。
麻黄には、血圧の上昇によって胎盤への血流が低下するリスクがあります。そのため、麻黄が含まれている葛根湯などの漢方の服用には注意が必要です。
また、便秘薬としてよく処方される「大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)」などに含まれる大黄には下痢や子宮収縮を引き起こすリスクがあります。
体質や症状に合わせて選ぶ
体質や症状は、患者様によってさまざまです。体質に合わない漢方を服用した場合、皮疹が出たり胃腸に痛みが出たりする場合があります。
妊娠中に漢方薬の服用を検討するときは、必ず主治医や漢方専門の薬剤師へ相談をしましょう。
漢方専門医へ相談する
漢方もお薬のため、体質や症状によっては副作用が出る場合があります。
ドラッグストアなどで手軽に購入することも可能ですが、妊娠中は成分に気をつけることが必要です。
妊娠中に漢方薬の服用を検討されるときは、漢方専門医へ相談し、ご自身の体質や症状に適した漢方を処方してもらいましょう。
関連記事:麻黄湯の効果について解説|飲むタイミングは?インフルエンザに効く?
妊娠中の漢方の効果を高めるために心がけたいこと
妊娠中の方が漢方を服用し、その効果を高めるためには、3つの点について心がけていただきたいことがあります。
ここからは、漢方を服用されるときに心がけていただきたいポイントを解説します。
適切な服用方法を実践する
漢方は、体の不調を改善する効果がありますが、服用方法を間違えると逆効果になる場合があります。
主治医や漢方専門医の指示に従い、決められた分量や回数を守って服用することが大切です。
生活習慣を見直す
妊娠中は、食の好みが変化したり、体調が悪く動かないと体重が増加しやすくなったりします。
食生活ではカルシウムや鉄分を含む食べ物を取り入れて、バランスの良い食事を心がけましょう。
また、適度な散歩や軽い運動をするなど、適切な体重を維持するようにすることも漢方の効果を高めるためには必要です。
体調の変化に応じて調整する
漢方の服用を始めたら、体調の変化に応じて種類や分量を調整することが必要です。
特に、妊娠中は体調が変化しやすく、ご自身で体調の把握をしておくことが大切です。漢方の服用を初めて体調がどのように変化したかを記録し、主治医や漢方専門医へ相談するときの参考にしましょう。
記録をすることで、ご自身の変化が伝えやすくなり、適切なアドバイスや新たな漢方薬の処方が受けられやすくなります。
妊活中に漢方薬を飲んでいた人の体験談
妊娠中に、実際に漢方薬を服用していた方の体験談をご紹介します。
妊娠による不調や、風邪などをひいてお悩みの方は、参考にしてはいかがでしょうか。
- 結婚後、妊活を始めたときから漢方薬のお世話になりました。 服用を始めてから半年ほどで妊娠がわかり、とても幸せな気持ちになりました。
妊娠中はつわりが酷かったのですが、症状にあった漢方薬を処方していただき、無事に出産をすることができました。
参考URL:https://www.dojin-kanpo.com/k_funitike.htm
- もともとアレルギーがあり漢方薬を服用していました。妊活に悩んでいることを相談したところ、不妊治療のお薬と併用できる漢方の処方をしていただきました。 アレルギーも落ち着き、妊活に効果がある漢方に絞ったところ、妊娠することができビックリです。
過去に流産の経験があり、年齢的な不安もあったので、流産を予防するための漢方薬を新たに処方していただき、無事出産をすることができました。
母子ともに、元気に生活を送っています。
参考URL:https://www.dojin-kanpo.com/k_funitike.htm
オーダーメイド漢方のご相談なら運龍堂まで
長い歴史を持つ漢方薬には、妊娠中の方でも安心して服用していただけるものが数多くあります。しかし、体質や症状に適した漢方を選ばないと、不調の改善を目指すことはできません。
すでに服用されている西洋薬との併用や、調合されている生薬の種類によっては、血圧の低下や子宮の収縮など副作用が起きるので注意が必要です。
雲龍堂では、患者様の体調や体質を詳しくお伺いし、一人ひとりにあったオーダーメイドの漢方を処方いたします。
妊娠による不調で外出が難しい方や、遠方にお住まいの方でもご相談いただけるように、オンラインによる無料相談もお受けしています。
妊娠による体調のお悩みを解決し、無事にご出産できるようにお手伝いをさせていただきます。どうぞお気軽にご相談ください。
まとめ
自然由来の生薬を調合した漢方は、古来より母体や胎児を守るためのお薬として使われてきました。
妊娠中は、つわりといった体調の不調が起きやすく、精神的にも不安定になりやすいです。漢方薬は、体の不調を改善することで、精神的な不安を取り除く効果が期待できます。
しかし、妊娠中は服用することで母子ともに悪い影響を及ぼすことがあり、注意が必要です。
雲龍堂は、漢方専門の調剤薬局として、妊娠中の方が持つ不調を改善するためのお手伝いをしています。
移動が難しい方のために、無料のオンライン相談もご用意しています。
妊娠中の不調でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
この記事の監修薬剤師
運龍堂 佐藤貴繁
略歴
1977年 北海道生まれ。北海道立札幌南高等学校
北海道大学薬学部を卒業
2003年 薬剤師免許を取得
2006年 北海道大学大学院薬学研究科生体分子薬学
専攻博士後期課程を終了後、博士(薬学)取得
2011年 福祉社会法人 緑仙会理事 就任
2012年 杜の都の漢方薬局 運龍堂 開局
2013年 宮城県自然薬研究会会長 就任
2017年 宮城県伝統生薬研究会会長 就任


