


十全大補湯を飲んで本当に痩せる?漢方専門薬剤師が解説!

「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」という名前の漢方薬をご存じですか?
昨今、十全大補湯を服用すると痩せられるといったうわさが話題になっていますが、その真偽について気になる方も多いでしょう。
そこで本記事では、十全大補湯を服用することで本当に痩せることができるのか、漢方を専門とする薬剤師が詳しく解説します。
目次
【結論】十全大補湯は痩せるのか?
結論からお伝えすると、「十全大補湯」自体に痩せる効果があるわけではありません。
含まれる生薬の力で身体の不調を改善し、結果として痩せやすい体作りをサポートしています。
【十全大補湯に含まれる生薬】
黄耆 (おうぎ) | 桂皮 (けいひ) | 地黄 (じおう) | 芍薬 (しゃくやく) | 蒼朮 (そうじゅつ) |
川芎 (せんきゅう) | 当帰 (とうき) | 人参 (にんじん) | 茯苓 (ぶくりょう) | 甘草 (かんぞう) |
十全大補湯が痩せるといわれる理由
東洋医学では、「気(き)・血(けつ)水(すい)」のバランスが乱れることがきっかけで身体に不調が現れるとされています。
十全大補湯は「気・血・水」の中の気と血を補う効果が期待でき、以下のような場合に処方されることが多い漢方薬です。
- 病後や術後の体力回復
- 疲労感・倦怠感
- 食欲不振
- 寝汗
- 手足の冷え
- 貧血
十全大補湯を服用することで気と血の巡りをよくし、上記のような症状を改善する過程とともに身体の代謝もあげることができます。
代謝が良くなると同じ活動量でも脂肪が多く燃焼されるようになるため、結果として「十全大補湯で痩せる」といわれるようになったのです。
関連記事:【漢方専門薬剤師監修】漢方薬がなぜ効くのかを科学的視点から解説
痩せる目的で十全大補湯を飲む際の注意点
体内の代謝の改善によって痩せやすい体作りをサポートする十全大補湯ですが、痩せる目的で服用をする際は気をつけなければならない点があります。
十全大補湯を服用するときの注意点を解説します。
体質や体調に合っているか確認する
十全大補湯は、体力回復や貧血・冷え性の改善などを目的として服用する漢方薬です。
そのため、ただ「痩せたいから」という目的での服用は思わぬ副作用を引き起こす可能性があります。
痩せるという目的ではなく、体質や不調などのお悩みに対して服用するようにしましょう。
正しい服用方法を守る
十全大補湯を服用する場合、成人の方で7.5g/1日を2〜3回に分け、食前もしくは食間に水や白湯で服用します。
十全大補湯の成分は空腹時に吸収されやすいですが、多少タイミングがずれても大きな問題はありません。
副作用や注意点を理解する
自然由来の生薬が原料であっても、含まれている生薬の成分によって副作用が生じることがあるため注意が必要です。
例えば、甘草(かんぞう)にはグリチルリチンという成分が含まれており、過剰摂取をすることで偽アルドステロン症と呼ばれる症状を引き起こすリスクがあります。
偽アルドステロン症を発症すると高血圧による頭痛やめまい・むくみや倦怠感などの症状が現れます。
また、偽アルドステロン症は低カリウム血症を引き起こすため、ミオパチー※1という症状も引き起こす恐れがあります。
その他にも、発疹など皮膚に副作用が現れたり、胃に不快感を感じたりする可能性もあるため、高血圧の方や持病のある方は服用前に医師や薬剤師へ相談することが大切です。
※1:身体が動かしづらくなる、飲食物が飲み込みにくくなる、疲労感が現れる など
生活習慣の見直しと併用
ご紹介したように、十全大補湯そのものに痩せる効果があるわけではなく、代謝を改善することで痩せやすい体作りのサポートをしてくれます。
実際に体重を落としたりボディラインをスッキリさせたりするためには、身体を動かしたり食生活を見直したりといった生活習慣の見直しも重要です。
十全大補湯以外で痩せるといわれる漢方薬
漢方薬の中には、「十全大補湯」以外にもダイエットに効果があるとされる漢方薬が存在します。
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
18種の生薬から構成されている防風通聖散は「通聖」とも呼ばれ、聖人が服用するほど価値の高い漢方薬とされています。
主に肥満症や便秘・高血圧に伴う動悸や肩こり・のぼせなどの症状で用いられます。
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
むくみや水太り・関節の腫れや痛み・多汗症などに処方される防已黄耆湯は、体内の余分な水を排出し、症状を改善させる効果が期待できます。
大柴胡湯(だいさいことう)
肥満や便秘といった症状で用いられる大柴胡湯は、ストレスやホルモンバランスの乱れといった精神的不安や緊張を改善し、自律神経を整えることで身体の代謝や便秘症状などを改善します。
麻子仁丸(ましにんがん)
麻子仁丸は、便秘や便秘に伴う膨満感や腹痛・食欲不振などに効果が期待できる漢方薬です。
水分が不足して硬くなった便を柔らかくし、便通を促す働きがあります。
加味逍遥散(かみしょうようさん)
加味逍遥散は、精神的な不安や緊張からくる自律神経の乱れを改善し、血行をよくする働きがある漢方薬です。
【痩せるといわれる漢方薬のまとめ】
漢方薬名 | 主な適応・特徴 |
防風通聖散 | 脂肪燃焼・便秘・むくみ(肥満体質向け) |
防已黄耆湯 | むくみ・水太りタイプの肥満 |
大柴胡湯 | 体力があり便秘傾向の肥満体質 |
麻子仁丸 | 便秘改善(便秘による体重増加やむくみに) |
加味逍遥散 | ストレス・ホルモンバランスの乱れによる肥満 |
ご紹介した漢方薬は、便秘の症状緩和や水太りの改善・自律神経の乱れを正すなどの効果によって体重を減らせる可能性があります。
しかし、十全大補湯と同様にあくまでも痩せやすい体作りをサポートするものであり、確実に痩せるわけではありません。
痩せる目的での服用はせず、医師や薬剤師に相談したうえで、体質や不調の改善を目的として服用するようにしてください。
関連記事:「痩せる?」と話題の五苓散の副作用を漢方医が解説!
漢方薬のことでご相談なら運龍堂まで
漢方薬は、自然の恵みから作り出された生薬を組み合わせており、その組み合わせ次第でさまざまな症状の改善が期待できます。
そのため、漢方薬を服用する際は患者様一人ひとりの症状に合わせた処方が必要です。
雲龍堂は、漢方専門の調剤薬局として、症状に合ったオーダーメイドの漢方薬を処方いたします。
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漢方薬でお悩みの方は、ぜひお気軽に雲龍堂へご相談ください。
まとめ
「飲めば痩せる」と話題になっている漢方薬は十全大補湯のほかにも多く存在しますが、いずれも痩せる目的で服用する薬ではありません。
含まれている生薬の効果によって不調や体質の改善を促し、その結果として痩せたと感じることはあっても、過度な使用によって思わぬ副作用を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。
また、持病や服用しているほかの薬がある場合も副作用のリスクがあるため、医師や薬剤師へ相談することが大切です。
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この記事の監修薬剤師
運龍堂 佐藤貴繁
略歴
1977年 北海道生まれ。北海道立札幌南高等学校
北海道大学薬学部を卒業
2003年 薬剤師免許を取得
2006年 北海道大学大学院薬学研究科生体分子薬学
専攻博士後期課程を終了後、博士(薬学)取得
2011年 福祉社会法人 緑仙会理事 就任
2012年 杜の都の漢方薬局 運龍堂 開局
2013年 宮城県自然薬研究会会長 就任
2017年 宮城県伝統生薬研究会会長 就任


